トラはキツネを捕まえると、大きな口を開けてキツネを食べようとしました。
「ちょっと待って下さい。トラさん」
キツネが、トラに言いました。
「あなたは自分だけが強くて、動物たちの王さまだと思っているのでしょう? でも、あなたはまだまだ、わたしにはかないませんよ」
「なに? お前がおれさまより強いもんか!」
「いいえ、わたしの方が強いですよ」
「うそだ!」
「うそだと思うなら、わたしと一緒に町を歩いてごらんなさいな。人間たちがわたしを見て、もし怖がらなかったら、その時はわたしを食べてもいいですよ」
「よし、それでは一緒に行ってやろう」
そこでキツネはトラを連れて、にぎやかな町へ行きました。
すると町を歩いていた人間たちは、みんなキツネの後ろを歩いているトラが怖くて、我先にと逃げてしまいました。
そこでキツネは、いばって言いました。
「ねえ、人間たちはわたしを見て、逃げて行ったでしょう」
するとトラは、
(キツネの言う事は本当だった。あの人間がこんなに恐れるとは、キツネはそうとう強い奴に違いない)
と、思い、キツネが怖くなって、尻尾をまいて逃げてしまいました。