山の途中で夜になり、道がわからなくてこまっていると、運よく、ピカピカと光った金色の鳥の羽をひろいました。
「これは、べんりだ」
イワンは、その羽で足もとをてらしながら、ぶじに都につくことができました。
そして王さまに、その羽をさしあげると、
「これはめずらしい。これは火の鳥の羽だ。この羽を持っているなら、鳥のいるところも知っているだろう。つかまえてきたら、おまえをわしのけらいにしてやる」
と、いいました。
イワンが困っていると、子ウマが、
「それならいい考えがあります。トウモロコシとブドウ酒をもらって、出発しましょう」
と、いいました。
イワンは子ウマの背中に乗って、一週間も走りつづけ、美しい花にかこまれた泉のほとりにつきました。
トウモロコシとブドウ酒をならべて、岩のかげからようすを見ていると、どこからか火の鳥がやってきて、食べたり飲んだり、いい気持ちでねころんでしまいました。
「しめた!」
イワンはさっそく火の鳥をつかまえて、お城に帰りました。
すると、王さまはいいました。
「火の鳥がつかまえられるなら、海の女王だって連れてこられるだろう。すぐ出かけなさい」
イワンが困っていると、子ウマがいいました。
「おやすいご用です。サトウのおかしをもらって出発しましょう」
イワンはまた、子ウマの背中に乗って一週間も走りつづけ、海べにあった金の船の中にサトウのおかしをおいて、物かげでようすを見ていました。
すると海の中から、美しい女王があらわれて、船の中のサトウのおかしを食べはじめました。
「それ、いまだ」
イワンはうしろからとびかかって女王をつかまえて、お城に帰ってきました。
王さまはたいへん喜んで、女王に、
「わたしのお嫁さんになってください」
と、いいました。
すると女王は、
「あなたがグラグラとにえたっている、ミルクのおふろにはいることができたら、おおせにしたがいましょう」
と、こたえました。
ずるい王さまは、イワンを使ってためしてみようと考え、
「たびたびの働きでつかれただろう。ミルクのふろにはいって、ゆっくりやすむがいい」
と、いいました。
さあ、たいへんです。
イワンはグラグラとにえかえっているミルクのふろの前で、まっさおになりました。
すると子ウマが、しっぽをふろの中につっこみ、ブルッとふるわせて、ミルクのしずくをイワンのからだにかけていいました。
「もう大丈夫。さあ、おはいりなさい」
イワンがおそるおそるふろにはいってみると、ふしぎと、ちっともあつくありません。
それを見た王さまは、すっかり安心して、
「のけ! こんどはわしの番だ」
と、いきおいよくふろに飛びこみましたが、たちまち大やけどで、死んでしまいました。
そしてイワンはけらいたちにすすめられて、新しい王さまになり、海の女王をおきさきにして、子ウマといっしょにいつまでもなかよくくらしました。