ある日、草原を歩いていると、カエルがピョンと飛びだしたので、ふみそうになりました。
でも、うまくまたいでとおりました。
するとうしろで、だれかがエメリヤンをよびました。
見ると、美しい娘さんです。
「エメリヤン。わたしをお嫁にもらってちょうだいな」
エメリヤンは娘さんが気にいったので、お嫁にもらいました。
ある日、エメリヤンの家の前を、王さまが通りました。
王さまは、エメリヤンとお嫁さんが仲よくしているのを見ると、いじわるをして困らせてやろうと思いました。
そこで王さまは、エメリヤンをお城によんで、二人分の仕事をさせました。
ところがエメリヤンは、夕方までに仕事をすませて、歌をうたいながら家へ帰りました。
つぎの日は三人分、そのつぎの日は五人分と、どんなにたくさん仕事をさせても、エメリヤンはちゃんと仕事をしてしまいます。
「ではあすは、お城のまわりに川をつくって、その川に舟をうかべるのだ。できなかったら、おまえの首を切ってしまうぞ!」
王さまは、一人ではぜったいにできないことをいいつけました。
「王さまは、わたしをいじめ殺すつもりなんだ」
と、エメリヤンはお嫁さんにいいました。
「まあ、心配しないで、早くおやすみなさい」
つぎの朝、起きてみると、だれがつくったのか、お城のまわりに大きな川ができています。
りっぱな舟も浮かんでいます。
あとは、舟つき場の上を、たいらにならせばよいだけでした。
王さまはそれを見ると、くやしがって、むちゃくちゃなことをいいつけました。
「こんどは、どこかわからない所へ行って、なにかわからないものを持ってこい!」
エメリヤンは困って、またお嫁さんにそうだんしました。
すると、お嫁さんはいいました。
「わたしのおばあさんの所へ行って、教えてもらいなさい」
エメリヤンはいわれたとおり、森の中に住んでいる、おばあさんの家へ行きました。
おばあさんは、
「この糸巻のころがるほうへ行って、たいこをさがしだして、お城へ持って行きなさい」
と、教えてくれました。
エメリヤンは、糸巻のころがるほうへついて行って、たいこを見つけました。
それをお城へ持って行くと、王さまはそれを見もしないでいいました。
「それは、わたしのほしいものじゃない」
「そうですか。では、たたきこわしてしまいましょう」
エメリヤンが力いっぱいたいこをたたくと、お城の兵隊がみんな、たいこのそばに集まってきました。
たいこをたたきながら歩いていくと、兵隊もゾロゾロとついてきます。
兵隊をとられてしまっては、たいへんです。
「おい、エメリヤン、やめてくれ。もうお前をいじめないから、ゆるしてくれ」
王さまは大声でさけびましたが、エメリヤンはドンドンたいこをうちながら、川のそばまできました。
そして、たいこをコナゴナにこわして、川の中へほうりこみました。
すると兵隊は、バラバラに逃げてしまいました。
それから王さまは、もうむりをいわなくなったので、エメリヤンとお嫁さんは、しあわせにくらしたということです。