「オーケー、清書せいしょして」ハーマイオニーがレポートと、自分の書いた羊よう皮ひ紙しを一枚、ロンにぐいとさし出した。「それから、私の書いた結論けつろんを書き加えて」
「ハーマイオニー、君って、ほんとに、僕がいままで会った最高の人だ」ロンが弱々しく言った。「もし僕が二度と再び君に失礼なことを言ったら――」
「――そしたらあなたが正常に戻ったと思うわ」ハーマイオニーが言った。「ハリー、あなたのはオッケーよ。ただ、最後のところがちょっと。シニストラ先生のおっしゃったことを聞き違えたのだと思うけど、エウロパは氷で覆おおわれているの。子こ鼠ねずみじゃないわ。――ハリー」
ハリーは両りょう膝ひざをついて椅子から床に滑すべり降おり、焼け焦こげだらけのボロ暖炉だんろマットに四つん這ばいになって炎を見つめていた。
「あー――ハリー」ロンが怪訝けげんそうに聞いた。「なんでそんなところにいるんだい」
「たったいま、シリウスの顔が火の中に見えたんだ」ハリーが言った。
ハリーは冷静れいせいに話した。なにしろ、去年も、この暖炉の火に現れたシリウスの頭と話をしている。しかし、こんどは果たして本当に見えたのかどうか自信がなかった……あっという間に消えてしまったのだから……。
「シリウスの顔」ハーマイオニーが繰くり返した。「三校対抗試合で、シリウスがあなたと話したかったときそうしたけど、あのときと同じ でも、いまはそんなことしないでしょう。それはあんまり――シリウス」
ハーマイオニーが炎を見つめて息を呑のんだ。ロンは羽は根ねペンをぽろりと落とした。ちらちら踊おどる炎の真ん中に、シリウスの首が座っていた。長い黒くろ髪かみが笑顔を縁取ふちどっている。