しかし、そのスナック愛用者でさえ、フレッドの別れの言葉を深く胸に刻きざんだドタバタの達人たつじん、ピーブズには敵かなわなかった。狂ったように高笑いしながら、ピーブズは学校中を飛び回り、テーブルをひっくり返し、黒板から急に姿を現し、銅像や花瓶かびんを倒した。ミセス・ノリスは二度も甲かっ冑ちゅうに閉じ込められ、悲しそうな鳴き声を上げて、カンカンになったフィルチに助け出された。ピーブズはランプを打ち壊こわし、蝋燭ろうそくを吹き消し、生徒たちの頭上で火の点ついた松明たいまつをお手玉にして悲鳴ひめいを上げさせたし、きちんと積み上げられた羊よう皮ひ紙しの山を暖炉だんろめがけて崩くずしたり、窓から飛ばせたり、トイレの水道蛇口じゃぐちを全部引き抜いて三階を水浸みずびたしにしたり、朝食のときに毒どく蜘ぐ蛛ものタランチュラを一袋、大広間に落としたりした。ちょっと一休みしたいときは、何時間もアンブリッジにくっついてプカプカ浮かび、アンブリッジが一言言うたびに「ベッ」と舌を出した。
アンブリッジにわざわざ手を貸かす教きょう職しょく員いんは、フィルチ以外に誰もいなかった。それどころか、フレッド・ジョージ脱だっ出しゅつ後一週間目に、クリスタルのシャンデリアをはずそうと躍起やっきになっているピーブズのそばを、マクゴナガル先生が知らん顔で通り過ぎるのをハリーは目もく撃げきしたし、しかも、先生が口を動かさずに「反対に回せばはずれます」とポルターガイストに教えるのを確かに聞いた。
極きわめつきは、モンタギューがトイレへの旅からまだ回復していないことだった。いまだに混乱こんらんと錯乱さくらんが続いて、ある火曜日の朝、両親がひどく怒った顔で校庭の馬車道をずんずん歩いてくるのが見えた。
「何か言ってあげたほうがいいかしら」モンタギュー夫妻ふさいが足音も高く城に入ってくるのを見ようと、「呪じゅ文もん学がく」教室の窓ガラスに頬ほおを押しつけながら、ハーマイオニーが心配そうな声で言った。「何があったのかを。そうすればマダム・ポンフリーの治ち療りょうに役立つかもしれないでしょ」
「もちろん、言うな。あいつは治なおるさ」ロンが無む関かん心しんに言った。
「とにかく、アンブリッジにとっては問題が増えただろ」ハリーが満足げな声で言った。