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蛇神5-3-1

时间: 2019-03-27    进入日语论坛
核心提示:     1「武兄ちゃん」「よう、俊正」「何、作ってるの?」「竹トンボ」「下手くそ。ぜんぜん竹トンボに見えねー」「うるさ
(单词翻译:双击或拖选)
      1
 
「武兄ちゃん……」
「よう、俊正」
「何、作ってるの?」
「竹トンボ」
「下手くそ。ぜんぜん竹トンボに見えねー」
「うるさい」
「ここもっと削った方がいいよ。それとここも。それじゃ、飛ばないよ」
「うるさいって」
「ねえ、ぼくにやらせて。ぼくの方がうまいってば」
「馬鹿。押すな。あー。この馬鹿野郎。おまえが押すから、変なとこ削ちゃったじゃないか」
「押さなくたって、変なとこばっか削ってるんじゃんか。兄ちゃん、今まで、小刀なんて使ったことあるの?」
「……」
「ねえねえ、あるの?」
「揺するな」
「鉛筆削るときとかさぁ」
「あのな。いいこと教えてやろうか」
「なに?」
「都会にはな、こんなド田舎のド僻地《へきち》と違って、鉛筆削りっていう有り難いものがあるのだよ、少年。つまるところ、よほどの物好きでない限り、鉛筆削るのに小刀なんてしゃらくせーもの使わねえんだよ」
「それって、生まれてはじめて、小刀握ったってこと?」
「そうとも言うな……」
「下手くそなはずだ」
「あ、また押した。押すなって言ってるだろうが!」
「押してないもん」
「……」
「……」
「おい、俊正」
「なあに」
「俺の背中にへばりついてるおまえの弟、なんとかしろ。さっきから顔こすりつけて、背中でハナ拭《ふ》いてるっぽい」
「良晴、離れろって」
「やーん。ここがいい。ぽかぽかしてあったかいもん」
「ぽかぽかして温かいからここがいいって」
「人の背中を湯たんぽがわりにするな。いいから力づくでひっぺがせ」
「良晴、こっち来い」
「やだぁ。武兄たんのそばがいい」
「武兄ちゃんのそばがいいって」
「いちいち通訳するな。あ、また拭いてる」
「良晴。兄ちゃんの背中でハナ拭くなって。こっち来いってば」
「わーん。やだー」
「良晴!」
「やだー。うぎゃー」
「うるさい!」
「兄ちゃん、こいつ、離れないよ」
「ったく、甲羅みたいにへばりつきやがって。俺は河童《かつぱ》じゃねえぞ。俊正、おまえ、ティッシュ持ってるか?」
「チリ紙なら持ってるけど」
「それでハナかんでやれ」
「良晴、これでハナかめ」
「ちーん」
「……」
「……」
「おまえの弟な」
「うん?」
「病気じゃないのか」
「なんで?」
「いつ見てもハナ垂らしてるじゃん。今時、都会じゃ、ハナ垂らしてるガキなんざどこ探してもいないぞ。しかも、黄色いハナなんて。どっか悪いんじゃないのか」
「今、ちょっと風邪ひいてるみたい。それとチクノウだって」
「チクノウか。やっぱな。医者に見せたのか」
「今度連れてくって。今はうちにあるカンポー薬飲ませてるみたいだけど」
「早く連れてった方がいいぞ。チクノウって恐ろしい病気だからな」
「ほんと……?」
「知らなかったのか」
「何が……?」
「ここだけの話だけどな、癌よりこわいんだぞ」
「……」
「あの黄色いハナに見えるやつな、本当をいうとな、ハナじゃなくて脳みそなんだぞ……」
「え」
「チクノウってのはな、脳みそがある日突然沸騰して液化して、耳や鼻や口からダーと垂れ流しになるこわい病気なんだぞ」
「……」
「そのうち、耳や口からもブワーと出てきて、あっという間に弟の頭から脳みそがスッカラカンになくなっちまうんだぞ」
「……」
「奇病中の奇病だから、今の科学じゃ治す方法も見つかってないらしい。見つけたらノーベル賞ものだと言われてるんだ。おまえの弟は下手をすると、一生、脳みそなしの中身くりぬいたハロウィンのかぼちゃみたいな頭で暮らさなきゃならないんだぞ。読み書きはもちろん、まともに喋《しやべ》ることもできないんだぞ。脳みそがないんだからな」
「……」
「……」
「う……」
「……」
「嘘だよね?」
「嘘だよ」
「嘘つき!」
「痛っ。いきなり体当たりするから、指、切っちゃったじゃねえか!」
「だって、兄ちゃん、嘘つきなんだもん。この前も、ゴキブリ潰《つぶ》したときに出る白い汁はゴキブリの脳みそだって嘘ついたじゃん。ゴキブリって、頭から尻尾《しつぽ》までビッシリ脳みそが詰まった地球最強の知的生物だって。学校で友達に話したら、おまえ馬鹿かって言われたよ」
「ここだけの話って言っただろうが」
「嘘つきは泥棒のはじまりだよ」
「田舎じゃそう言うのか。都会じゃな、嘘つきは政治家のはじまりっていうんだ」
「それも嘘くせえ。子供に嘘ばっか教えるなよ」
「って、当のガキがえらそうに言うな。あ。血が噴き出てきた」
「痛そう」
「呑気《のんき》に見てるなよ。やばい。血が止まらない。早く、絆創膏《ばんそうこう》持ってこい!」
「良晴、絆創膏だって」
「弟をパシリにするな。おまえが取ってこい」
「どこにあるか知らないもん」
「知らなかったら、うちの人に聞け!」
「絆創膏、どこにあるの?」
「なんで俺に聞くんだよ」
「兄ちゃんだって、うちの人じゃん」
「……」
 十一月一日のよく晴れた午後だった。
 部屋で縫い物をしていた神耀子《みわようこ》は、窓の外から漏れ聞こえてくる子供たちの話し声を聞くともなく聞いていたが、ついにぷっと吹き出した。
 まるで掛け合い漫才のような会話をしていたのは、二週間ほど前から、怪我の療養と受験勉強を兼ねて神家に居候している、長兄の次男の武と、副村長の長男の矢部俊正だった。
 外を見なくても、声で分かる。
 武が竹トンボを作っている最中に指を怪我したようだが、大丈夫だろうかと、縫い物を傍らに置くと、耀子は立ち上がって、窓際に寄って外を見てみた。
 中庭を挟んだ向かいの部屋の縁側に、素足に下駄ばきの武が腰かけ、裏の竹林で拾ってきたらしい竹を小刀で熱心に削っている。武の背中には俊正の五歳になる弟がおんぶするようにしがみついていた。
「絆創膏、絆創膏」と騒いでいた武は、どたばたと走り回って俊正が持ってきた絆創膏で応急処置を終えると静かになって、また竹トンボ作りに専念しはじめた。
 その手元を覗《のぞ》きこむようにして隣に俊正が座りこんでいる。
 耀子は窓際に立って、そんな光景を眺めていたが、ふいに脳裏に、過去にも似たような光景を見たという記憶が蘇《よみがえ》った。
 それは三十年以上も昔の、耀子がまだ十代の頃だった。
 あの子たちの父親も……。
 武の父親の貴明が、ちょうど今の武くらいのとき、夏期休暇などで帰省してくると、やはり今の俊正くらいの年齢だった矢部稔が遊びに来ていて、ああして、縁側で二人で肩を寄せ合って、プラモデルか何かを熱心に作っていたことがあった。
 それをこの部屋から見ていたことがある……。
 あれから三十年以上がたったのか。
 耀子はふいに足元を波にさらわれたような軽い目眩《めまい》を感じた。
 音もなくさらさらと年月だけが流れていく……。
 子供の頃から身体が弱く、病気がちで、長くは生きられないと思っていた。二十代後半で子宮癌を患ったときは死を覚悟したこともあったが、幸い、術後の経過は良く、その後転移も起こらず、最近は、年のせいか、更年期障害らしき症状に悩まされるようにはなったものの、それでも、わたしはこうして生きている……。
 病気がちの人間の方が、日々身体をいたわり、病気との付き合い方を知っているせいか、健康すぎる人間よりもかえって長生きすることがあると聞いたことがある。
 わたしもそうなのかもしれない。
 もしかしたら……。
 この先、あと十年、二十年、三十年と細々と生き永らえて、武や俊正が大人になって子供を作り、その子供たちが、祖父や父親たちがそうしていたように、あそこでああして一緒に遊んでいるさまを見ることができるのかもしれない。
 耀子はふとそんな夢想をした。
 できれば、その光景をこの目でしかと見届けたい。見届けてからあの世とやらに旅立ちたい……。
 そんなことを考えながら、しばらく見ていると、俊正よりも少し遅れて学校から帰ってきた神家の年長の少年たちも、一人二人と自然に中庭に集まり出した。
 ようやく竹トンボが完成したらしく、武は、意気揚々と縁側から立ち上がると、固唾《かたず》を飲んで見守っている周囲の少年たちに、「見てろよ。今飛ばしてやるから」と自信たっぷりに言って、宙に飛ばそうとしたが、その竹トンボもどきは、武の手から勢いよく離れると、そのまま、ボトンと地面に落下した。
「アラ」
「落ちた」
「飛ばねーじゃん」
「何、これ?」
「飛ぶわけねーよ。あんなの」
 俊正が手を叩《たた》いて喜んでいる。
「変だなぁ。どこがおかしいんだ。力学的には飛ぶはずなんだが……」
 竹トンボもどきを拾い上げて、首をひねる武に、俊正が横合いから、「どこがおかしいって、全部おかしいんだよ。つうか、飛ぶ方がおかしいや」とせせら笑って、「おまえ、時々、思いっ切りむかつくこと言うな」と武に頭を小突かれていた。
 中庭の少年たちの騒ぎにつられたように、神家の女たちも、部屋や台所から出て、少し遠巻きにして庭の方を見ていた。
 いつの間にか、武を中心に、ちょうど蛇《じや》の目《め》のような二重の人の輪ができはじめている。
 こうした蛇の目現象は今日に限ったことではなかった。この二週間というもの、大声をあげて皆を呼び寄せたわけでもないのに、武が現れるところには、自然にこうした二重の人の輪が作られるようになっていた。
 十八歳の少年の存在そのものが、何か不思議な強い輝きと引力をもって、神家の人間、いや、神家だけでなく近隣の人間をもひきつけているとしか思えなかった。
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