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旅路04

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    4尾鷲《おわせ》の中里家といえば、江戸時代から続いた素封家《そほうか》で、全盛の頃は、大阪まで他人の地所を通らな
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尾鷲《おわせ》の中里家といえば、江戸時代から続いた素封家《そほうか》で、全盛の頃は、大阪まで他人の地所を通らないで行けると噂《うわさ》されるほどの山を持っていた。
それが先代の中里勝吉がそんな年でもないのに、脳溢血《のういつけつ》で急死したどさくさに、子飼の番頭が米相場に手を出して、店の金を流用し、莫大《ばくだい》な借金を作ってしまった。
以来、表向きは昔ながらの見得をはっているものの、内実は火の車という苦しい算段を、弱冠《じやつかん》二十五歳の勇介が寝食を忘れてたて直しに奔走している現状であった。しかし、先代の未亡人みちは今だに昔の夢が忘れられず、ことごとに息子の勇介にたてついたし、そんな母親に勇介もほとほと手を焼いている感じだった。
それが、たまたま、長女弘子の縁談で正面からぶつかり合ったのである。
そのとばっちりを受けた雄一郎こそいい面の皮で、長いあいだ待たされた挙句《あげく》のはて、
「それが……障りいうほどのことやおへんのやが……先代の未亡人が、えらい慎重なお人じゃよってに……弘子はんを会わす前に、もうちっと、室伏はんの家の事情のことなど聞きたいと、まあ、こう言わはってのう……」
浦辺を通じて伝えてきた。
「へえ……?」
伯父は拍子抜けしたように、呆然《ぼうぜん》と浦辺の顔を眺めている。
「すまんが、明日、もう一度出直して来てくれんか……それに、うっかりしとったが、どうも、今日は仏滅やそうな、お日柄も悪いよって……」
浦辺は言いにくそうに、つけ加えた。
「ほう、仏滅……そりゃそりゃ……」
なんだか要領を得ない話だったが、伯父の久夫がひたすら恐縮しているので、雄一郎は苦情も言えない。
翌日、伯父と二人で、再び出直してくると、中里家の玄関先で、浦辺友之助が待っていた。
「昨日は、えらいすまんことで……弘子はん、今、おめかしの最中でな、その間にあんたと少々、打合せをせんならんが……」
雄一郎の顔色をうかがいながら、
「どうや雄一郎はん、ぼんやり待ってるのもしんきなやろ、そこらを散歩して来てもらえんやろか……ちょうどこの先に、中里はんのお家《いえ》の大けな竹林があるでのう……あれだけの見事な竹はなかなか見られんで、そんなもんでも見物して来てもろうたらどうやろう思うとるんじゃが……」
と言った。
「いいですよ、お邪魔なら、竹林でも杉林でも見に行って来ます、ま、ゆっくり御相談下さい……」
雄一郎は内心、むかっ腹をたてたが、それでも伯父の立場を考えてそこを離れた。
しかし、尾鷲の自然はのどかで美しかった。
すすきが白い穂をみせている。秋の陽《ひ》が如何にも温く、道端に野菊が可憐に咲いていた。
広々とした畑のはずれに農家があり、その前庭で老人が一人、竹を磨いている。
「中里さんの竹林は……?」
と、尋ねると、
「この道を真っすぐ上ったらすぐや、どうせ下の畑に用があるさかい、案内してあげんしょう」
気軽に、そばにあった籠《かご》を肩にひっかけて先に立った。
竹林へ続く小道にも秋の陽が木の葉洩《も》れに、ちらちらと影を落していた。
明るい陽の光である。
道の傍に蘇鉄《そてつ》が茂っていた。
北国に生れ、北国に育った雄一郎の眼に、この南国育ちの樹木は、なんともエキゾチックに映った。
頭上に茂っている木の枝が次第に重なり合って、深くなった。
陽の光は気がつかない中に薄くなって、やがて昼なのに小暗い樹木のトンネルになった。
その突当りに木戸があった。
そこまでは、岩を抉《えぐ》った細道である。木戸を押すと、視界がぱっとひらけた。
「ほら、遠慮しとらんとお入り……」
老人は雄一郎を残して、下の畑へおりて行った。
なるほど、見事な竹林である。
秋の陽が幾筋も糸をひいて空間を流れている。なだらかな斜面から窪《くぼ》みにかけて、竹が見事に伸びていた。
風もなく、ひっそりとした午後なのに、竹林の中にはなにかが玲瓏《れいろう》と揺れていた。
竹の青に、空気が染まるようであった。光が、まるで水のようにあたりに漂って、あるかなきかの漣《さざなみ》を創り出している。
そこに立つと、雄一郎の心の中まで、竹の青が染みるようであった。
声をのみ、雄一郎は夢のように突っ立っていた。
眼を閉じると、さやさやと小さな笹《ささ》のさやぎが聞える。息をつめ、心を一つにして、雄一郎は竹の声を聞いていた。
ふと、竹の声の中に、別の足音が聞えた。
落葉をふんで、ゆっくりと竹の声の中を歩いてくる。小さな……小さな、かろやかな足音であった。
足音は、四阿《あずまや》の中の雄一郎に、全く気づいていないふうであった。
眼をあけて、雄一郎は竹林を見た。
ぎっしりと生え茂った竹の太い幹の間に、黒っぽい絣《かすり》の着物がちらと動いた。
続いて、赤い帯のはしが、みえた。
黒い髪と白い顔が、竹の青の中で、海の水のような青い空気の中で、ゆっくりと竹から竹へ、光の彩りの中を歩いている。
�竹の精�が若い娘の姿をして現れたのか、と雄一郎は幻覚した。
実際、その娘の現れ方は、あまりにも唐突で、夢幻的であった。まぼろしをみるように、雄一郎はその娘をみつめていた。
娘がはっと足をとめた。敏感に人の気配をさとったからだ。
そこに、声もなく突立って、自分をみつめている雄一郎に気づくと、娘の頬《ほお》にかすかな恥らいが浮かんだ。そして、そっと頭を下げると、そのまま、小走りに駈《か》けて行った。
「あ、ちょっと……」
雄一郎は声にならない声を出した。
が、娘にはその声が聞えたのか、木戸のところで立ち止り、ふりむいた。
まだ見送っている雄一郎を認めると、ちょっとはにかんだ微笑を浮かべ、すぐ、木戸の外へ消えた。
しばらく呆然《ぼうぜん》としていた雄一郎は、やがてはっと我にかえると、娘のあとを追って外へ出た。
農家の前庭で、先刻の老人がまた竹を磨いていた。雄一郎を見つけて、向うから声をかけた。
「どうやったね、ええ竹の林やったろが……」
「はあ……あのオ……今、僕が来る前に……竹の林から出て行った人がありませんでしたか、この道を通って……若い娘さんで……絣の着物をきて……赤い帯の……」
「ふん、それやったら、本家はんの娘はんや」
「本家……?」
「中里はんのお屋敷の娘はんやね……あのお人もえろうこの竹林が好きやでのう、子供の頃からよう来なした……竹と話をするんじゃ言いなすって、一日中、竹ん中に坐っておったりなア……」
「へえ、じゃあ、中里さんの……」
雄一郎の眼に、灯が点《とも》った。
老人への挨拶《あいさつ》もそこそこに、雄一郎は中里家へ駈け戻った。もはや、不快もなにも、どこかへ吹きとんでいた。
あの娘が、見合の相手だとしたら……。あの竹の精のような娘が……。
雄一郎は、もう一度、自分の眼で、しっかりと竹の精を捕えたかった。いや、なんとしても、もう一度あの竹の精に逢《あ》いたかった。
客間では、伯父の久夫と、村会議員の浦辺が雄一郎を待ちかねていた。
どうやら、浦辺の説得が功を奏して、とにかく、会うだけは会わせようと、弘子の母親のみちがようやく首をたてに振ったところであった。
雄一郎が席につくと、それから十分ほどして、女中を先導に、みち、弘子、勇介の順でしずしずと入って来た。
「ほなら、ご紹介させてもらいまっさ……」
浦辺が、もったいらしく咳《せき》ばらいを一つして、まず中里家のみちから勇介、弘子の順、次に、久夫、雄一郎と紹介していった。
雄一郎は弘子を見ていた。
(あの竹林の娘ではない……)
雄一郎の顔に、はっきりと失望の色が浮かんだ。
「雄一郎さんは鉄道へお勤めだそうで……」
当主の勇介が、まず口をきった。
「何年くらいにおなりですか?」
「はあ……もう五年になります」
「そうすると、失礼ですが、学校は……」
「はあ、高等小学校までです」
雄一郎は臆《おく》することなく答えた。
それにたいして、みちは露骨に軽蔑《けいべつ》の眼をした。
「まあ、小学校だけですか……」
「はあ……家が貧乏でしたし……父も居りませんでしたから……」
「お父さんはいつ歿《な》くなられたのです」
勇介が訊《き》いた。
「十年になります、僕が十歳の春でしたから……」
「お母さんもいらっしゃらないのですね」
「はあ……」
「ご兄弟は?」
「姉が一人、妹が一人です」
「まだ、ご縁談は?」
今度はみちが尋ねた。
「はあ……」
そのとき、不意にまた琴の音が聞えてきた。
雄一郎は、なんとなく、はっとして眼を庭へ移した。
「お姉さんのお年は……おいくつですねん……?」
みちが重ねて訊いた。
が、琴に気をとられていた雄一郎には、聞えなかった。
「お姉さん、おいくつ?」
「これ、雄一郎……」
伯父に膝《ひざ》を突かれて、雄一郎ははじめて我にかえった。
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