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旅路15

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    15家に帰りつくと、雄一郎は早速このことをはる子と千枝に報告した。「馬鹿らしいったらありゃしない」まず怒ったのは千
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家に帰りつくと、雄一郎は早速このことをはる子と千枝に報告した。
「馬鹿らしいったらありゃしない……」
まず怒ったのは千枝だった。
「なんで、兄ちゃん、自分の方から先に断ってやらなかったのよ。むこうから御縁のなかったものだなんて言われて、へいへいと引き下ってくるなんて……、馬鹿らしくって馬鹿らしくって……、腹が立つわ」
「いいんだよ、今度の話は最初から尾鷲の伯父さんの顔を立ててのことなんだ。伯父さんはいい人だし、いろいろ世話もかけた。その伯父さんが一生懸命骨折ってくれたことに対して、俺《おれ》たちは出来るだけのことをした……これでよかったんだよ」
雄一郎は冷静だった。
「私も雄ちゃんのいうのが正しいと思うの……これでよかったのよ」
はる子の表情も落着いていた。
「姉さん、本当にそう思ってくれるかい?」
「ええ……、私ね、今だからはっきり言うわ、千枝ちゃんにお金を持たせたけれど、もし、あちらさんが函館へ泊らず真直ぐ家へいらっしゃるようなら、この縁談は本気で考えなけりゃならない……。函館へお泊りになるようなら、纏《まとま》らなくて仕合せ……悪いけど、そう思っていたの」
「なんで……?」
千枝には姉の言う意味がよくのみこめないらしかった。
「なんで函館へ泊るようならあかんの……」
「それはね……」
はる子は苦笑した。
「あちらさんが本気で雄一郎のことを考えていらっしゃるのなら、一日も早く、一刻も早く、雄一郎の家族や家の状態などについて知りたいと思うのが人情じゃないかしら……、それを、のんびりと函館見物なんかなさってるようじゃ、まず、冷やかしと思っていいんじゃないかと……ね……」
「当て推量で判断して、もし違ったらとんだことになってしまうでしょう。それに、たとえなんであれ、雄ちゃんと御縁のあったお方じゃないの、あとで後悔するような真似はしたくなかったの……」
「姉さん、ありがとう……」
雄一郎は頭をさげた。
それほどまでに気を使っていてくれたのかと思うと、涙が出るほど嬉《うれ》しかった。
「なによ、あんたはこの家の主人なのよ、男がそう安っぽく頭を下げるもんじゃありません、さ、御飯がさめてしまうわ」
はる子は囲炉裏《いろり》の鍋《なべ》から、汁を椀《わん》によそった。
「……頂きます」
千枝も箸《はし》を取った。
「頂きます……」
「南部駅長さんには、ちゃんと御報告しておかなければね」
「ああ、明日、俺、報告しておく」
「なあ、姉ちゃん、湯ノ川の旅館とってもよかったよ、姉ちゃんもいっぺん行ってくるといい……」
千枝はまだ温泉旅館の味が忘れられないようだった。
「こいつったら、イカがうまいうまいって俺の分まで食っちまってさ、あとの言い草だけはしおらしいんだ。こんな美味《うま》いもん、姉ちゃんにも食わせたいとさ……」
「だって……」
千枝が口をとがらせた。
「本当にそう思ったんだもん……」
「ありがとう……、千枝……」
はる子がしんみりした声で言った。
「そのうち、きっとみんなで行こうね」
「うわあ、又、行かれるの……」
千枝は箸と茶碗《ちやわん》を持ったまま小躍りした。
「なんです、千枝、その恰好《かつこう》……」
はる子が千枝を睨《にら》んだ時だった。
カタリ……と、表の戸が音をたてた。
「おや、誰か来たんじゃないのか……」
「そうね」
はる子が立ちかけるのを押えて、
「俺が行く」
雄一郎は立って、表戸を開けた。
「どなたですか?」
闇《やみ》をすかしたとたん、眼を瞠《みは》った。
「有里さん……」
雄一郎の息が白く凍った。
有里の吐く息も白かった。
彼女ははるばる汽車で塩谷までやって来たのだ。
「君、一人?」
雄一郎が訊くと、有里は頷《うなず》いて、眼を伏せた。
「どなた?」
はる子が出て来た。
「まあ、中里さんの下のお嬢さん……どうぞ、散らかして居りますけど、どうぞお上りになって……」
「いいえ、ここで失礼いたします……、そのつもりで参ったんです」
「でもせめて、家の中へ……」
はる子は有里の手を引いて、土間へ入れた。
「明日、お帰りになるんだそうですねえ」
「はい、明日、朝の汽車で帰ります。その前にどうしてもお詫《わ》びをしなければ……と思って来てしまいました。なんといってよいのかわかりません……御迷惑をかけてしまいまして……」
「お嬢さん、そんなこと……」
「あの……、母や姉はけっして悪い人ではないんです。悪気があったわけでもないんです……。ただ、成り行きでこんなことになってしまって……、堪忍《かんにん》して下さい……。お詫びしてすむことだとは思っていません。でも、どうしてもお詫びにうかがわずにはいられなかったんです……」
涙がこぼれそうになったのか、有里はあわてて戸をあけた。
「では、ごめん下さいまし……」
「あっ、お嬢さん」
有里の姿は、たちまち闇に消えた。
はる子の額に、冷めたいものが当った。
「雄ちゃん、雪が降ってる……」
「姉さん、俺、ちょっと行ってくる」
雄一郎は、立てかけてあった傘《かさ》を掴《つか》んで表へとび出した。
「有里さーん」
まだそれほど遠くへは行くまいと思ったのに、有里の足は案外早く、追いついたのは、塩谷の駅の灯がそろそろ見えだすあたりだった。
「随分足が早いなあ」
「道が暗いので、夢中で……」
顔はよく見えなかったが、雄一郎が追いかけて来てくれたことが嬉しそうだった。
雄一郎は傘を有里にさしかけた。
「すみません。こんなことまでしていただいて……」
「でも、よく来てくれましたね……もう逢えないのかと思った」
「母や姉には、こちらに大事な忘れ物をしたからと言って……」
雪の夜道である。
見る人もないのを幸い、雄一郎は相合傘で有里を塩谷の駅へ送って行った。
塩谷駅は、山間の、ひっそりした停車場だった。夜ともなれば、あまり人の乗り降りもない。待合室はひっそりとして、他に人影もなかった。
小樽へ向う汽車が到着するまでには、まだ三十分あまり時間があった。
「なにしろ田舎だから、列車の数が少ないんですよ」
「尾鷲はもっと田舎ですわ、なにしろ汽車が通っていないんですもの」
「ああ……」
雄一郎は笑った。
とにかく、有里と一緒だと、それだけで楽しいのである。
「この駅、僕にとっては懐《なつか》しい駅なんですよ。鉄道へ入って最初に勤めたのがここなんです。もっとも臨時|雇《やとい》で、正式の鉄道員じゃなかったですがね」
「南部駅長さんも、ここにいらしったんですの?」
「ええ、そうなんです……。西洋人の言葉に、仕合せな人間は一生に二人の父を持つことが出来る、一人は血をわけた父、もう一人は恩師である、というのがあるそうですが、そういう意味では僕は仕合せな人間だと、いつも思っています」
「本当……羨《うらや》ましいわ」
「お父さん、歿《な》くなられてさびしいでしょう」
「ええ、それは……でも、だんだん慣れますわ、一生父に甘えているわけにはいきませんものね……」
有里はふっと表情をあらためた。
「母は可哀想な人なんです、父は派手好きでしたし、父の生きている頃は家の状態もよかったもんですから……、母は嫁に来て以来、なに不自由なく、父の好み通りの派手な生活を続けて来たんです。兄の代になって、家が左前になったと聞かされても、どうにも実感が湧《わ》かないのでしょうし、自分でも今更生活を変えるのは、土地の人への体面もあって、なかなか出来ないらしいんです」
「分るような気がします……」
雄一郎は頷いた。
「人間の過去というのは、そう簡単に消せるものではありませんからねえ」
「でも、室伏さんのお宅では、お姉さまも妹さんも、あんなに懸命になって働いていらっしゃる、一家が力を合せ、肩を寄せ合って生きているってこと……本当にうらやましいと思いました」
「家は貧乏だから……」
「私の家だって貧乏ですわ、外見《そとみ》だけは体裁がよくっても、内は借金だらけ、室伏さんのところより、もっと貧乏ですわ」
「僕にはよく分らんな、金持の貧乏ってことが……」
「私にもよく分らないんです」
「なあんだ……」
二人は思わず顔を見合せて、ほほえみ合った。
「ごめんなさい、こんなつまらない話をして……」
「いや……」
上り列車の改札がはじまった。
「一緒にホームまで行きましょう」
雪はだんだんはげしくなっていた。
ホームに立つと、急に別離の意味が二人の胸を締めつけだした。
「もっと早く、君に逢いたかった……」
雄一郎は太い息を吐き出しながら、ぼそりと言った。
「すくなくとも、あんな見合をする前に……」
有里がはっと顔を上げた。
「室伏さん……」
「僕は今度の見合が駄目だったことは、すこしも気にしていません、そんなことより、僕は君と別れることの方が……」
「私も……私もそうなんです」
有里の眼が、構内の電燈の明りにキラリと光った。
「なぜ、姉なんかとお見合をなさったの、よりによって、私の姉と……」
強い地響きと共に、列車が進入して来た。
「さようなら……」
有里の声は、機関車の轟音《ごうおん》にかき消された。
「有里さん!」
雄一郎はしっかりと有里の手を握りしめた。
「有里さん……」
列車が静止した。
「室伏さん……、さようなら」
有里は自分から力をこめて、雄一郎の手を握りかえしてから、そっと手をはずした。
「今度はいつ逢えますか?」
雄一郎は追いすがるように言った。
「…………」
有里は哀《かな》しそうな眼で、雄一郎をみつめただけだった。
一旦、尾鷲へ帰ってしまえば、二度と再び北海道へ来ることは覚束無《おぼつかな》い。二人ともそのことはよく知っていた。
「じゃ、元気でね……」
雄一郎は無理に笑いを作った。
いつでも、すぐにまた逢える恋人のように振舞おうとした。さもないと、本当に有里とは、これっきり逢えなくなるようで不安だった。
「室伏さんも……」
有里も敏感に雄一郎の気持が分ったらしく、無理に明るくほほえんだ。
発車のベルが鳴っていた。
「また……」
「ええ、またね……」
有里が手をのばした。
雄一郎はその手をしっかりと握りしめた。
列車が、ガクンと揺れ、そして静かにホームを滑りだした。
「危いわ……」
有里が言った。
しかし、雄一郎は手を離さなかった。
「手紙、出していいですか」
「…………」
「有里さん」
「お待ちしてます……」
雄一郎は列車と共に走った。
「さようなら……私も手紙、お出ししますわ……」
「うん、じゃあ……」
雄一郎はようやく手を離した。
「体に気をつけてね……」
「室伏さんも……」
あとの言葉は風に消された。
「有里さあん……」
去って行く列車に向って、雄一郎は大きく手を振った。
降りしきる雪の中へ、有里を乗せた列車はたちまち小さく消えて行った。
いつか、東京へ嫁入りする三千代を見送ったホームで、雄一郎は有里を見送った。
三千代の時は、遠ざかる列車の赤い光が消えたとき、別れの実感がひしひしと雄一郎に迫って来た。
有里を見送って、雄一郎は不思議と、別れるという感じがしなかった。
(これから、はじまるのだ……)
雄一郎は我が胸に、強く言いきかせた。
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