むかし、正直なお百姓《ひやくしよう》がいました。向こうの山をながめていると、その山のふもとのところから、煙《けむり》が三すじ、うすく立ちのぼっております。
「はて、ふしぎなことだ。」
と、お百姓はそこへ行ってみましたが、そばに行ってみると、煙は見えません。それが遠くはなれてみると、たしかに三すじ立っております。
「どうもふしぎだ。」
そこで、お百姓さんは、ある日、くわを持ってって、煙の出てるところを掘ってみました。下にきっと、なにかあるにちがいない。そう思ったからです。一尺《しやく》(約三〇センチ)、二尺、三尺と掘っていくと、五尺目にくわのさきがカチリと、固いものにあたりました。手でさわってみると、かめのようです。ふたが固くしてあります。力を入れて、そのふたをとったところ、お百姓さんはびっくりしました。
だって、その下に、かめの中にピカッと、光りかがやく大判小判《おおばんこばん》。金《きん》のお金《かね》がいっぱいはいっていたからです。
さて、どうしましょう。
どうしましょうって、それは天の神さまからさずかったものです。とってくればいいのですが、正直者のお百姓さんは考えました。じつは、ゆうべ、夢《ゆめ》を見たのです。空から、大判小判がふってくる夢を見たのです。
それが、今は地から大判小判が出てきたわけです。夢とちがうのです。そうすると、これは天の神さまがくださったものではないかもしれません。とすると、いただくわけにいきません。欲《よく》のない正直なお百姓さんですから、
「そうだ。そうだ。」
と、ひとりでがってんして、大急ぎでかめを土でうずめました。もとのとおりにして、家へ帰ってきました。帰ってくると、となりの、やはりお百姓のおじいさんに話しました。
「となりのおじいさん、向こうの山をごらんなさい。煙がかすかに三本のぼっておるところがあるでしょう。」
「なるほど、そういえば、かすかにのぼっとる。」
「うん、あそこを、きょう掘ったらな。大判小判がいっぱいの、かめがうまっていた。」
「フーン、それで、それどうした。」
「また、もとのとおり、うめてきてしまった。」
「なぜ、なぜそんなことをした。惜《お》しいじゃないか。」
「それが、それ、おれはゆうべ、天から福をさずかる夢を見たのじゃ。それが、きょうのは地からさずかることになる。夢とちがうから、これはおれのさずかる福でないと思って、もとどおりにうめてきてしまった。」
「惜しいことをしたなあ。」
欲の深いとなりのおじいさんは、何度もそういって惜しがりました。そのすえ、
「よしっ。それじゃ、その福、おれがさずかろう。おれは、どっちの夢も見ていないから、どっちからさずかってもいいわけだ。」
そんなかってなことをいって、くわをかついで、出かけました。
ところで、そのとなりのおじいさんが、山で煙の出ているところを、どんどん、どんどん掘っていったところ、話のとおり、一つのかめを掘りあてました。
「さあ、でたぞ。大判小判いっぱいのかめだ。」
おじいさんはそれをだきあげ、穴《あな》の外へ運びだしました。そこで、いよいよふたをとってみて、びっくりしました。
なんと、それが中味が、ヘビやカエルやナメクジや、さわるもきたない虫ケラばかりです。おじいさんは、腹《はら》を立てました。
「あいつ、正直者のくせに、こんなにうそをいって、おれをだましやがった。ようし、おぼえておれ。」
となりのおじいさんは、そんなひとりごとをいって、とにかく、そのかめをかかえて、家へ帰ってきました。
そして、その晩のことです。となりの正直おじいさんの家の屋根の上へ、そのヘビのかめをかかえてあがりました。そこで屋根に穴をあけ、そこからヘビやカエルやナメクジを、ドシャドシャ、下へ投げこみました。
「さあ、正直じいさん、天から福がふってきたぞ。」
正直じいさんは、この声を聞いて、屋根裏《うら》のほうをみあげました。すると、ほんとうに、そこからピカピカの大判小判がふって、家じゅうにちらばりました。
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
正直じいさんは、そういって、天からさずかった福に、頭をさげてお礼をいいました。
「はて、ふしぎなことだ。」
と、お百姓はそこへ行ってみましたが、そばに行ってみると、煙は見えません。それが遠くはなれてみると、たしかに三すじ立っております。
「どうもふしぎだ。」
そこで、お百姓さんは、ある日、くわを持ってって、煙の出てるところを掘ってみました。下にきっと、なにかあるにちがいない。そう思ったからです。一尺《しやく》(約三〇センチ)、二尺、三尺と掘っていくと、五尺目にくわのさきがカチリと、固いものにあたりました。手でさわってみると、かめのようです。ふたが固くしてあります。力を入れて、そのふたをとったところ、お百姓さんはびっくりしました。
だって、その下に、かめの中にピカッと、光りかがやく大判小判《おおばんこばん》。金《きん》のお金《かね》がいっぱいはいっていたからです。
さて、どうしましょう。
どうしましょうって、それは天の神さまからさずかったものです。とってくればいいのですが、正直者のお百姓さんは考えました。じつは、ゆうべ、夢《ゆめ》を見たのです。空から、大判小判がふってくる夢を見たのです。
それが、今は地から大判小判が出てきたわけです。夢とちがうのです。そうすると、これは天の神さまがくださったものではないかもしれません。とすると、いただくわけにいきません。欲《よく》のない正直なお百姓さんですから、
「そうだ。そうだ。」
と、ひとりでがってんして、大急ぎでかめを土でうずめました。もとのとおりにして、家へ帰ってきました。帰ってくると、となりの、やはりお百姓のおじいさんに話しました。
「となりのおじいさん、向こうの山をごらんなさい。煙がかすかに三本のぼっておるところがあるでしょう。」
「なるほど、そういえば、かすかにのぼっとる。」
「うん、あそこを、きょう掘ったらな。大判小判がいっぱいの、かめがうまっていた。」
「フーン、それで、それどうした。」
「また、もとのとおり、うめてきてしまった。」
「なぜ、なぜそんなことをした。惜《お》しいじゃないか。」
「それが、それ、おれはゆうべ、天から福をさずかる夢を見たのじゃ。それが、きょうのは地からさずかることになる。夢とちがうから、これはおれのさずかる福でないと思って、もとどおりにうめてきてしまった。」
「惜しいことをしたなあ。」
欲の深いとなりのおじいさんは、何度もそういって惜しがりました。そのすえ、
「よしっ。それじゃ、その福、おれがさずかろう。おれは、どっちの夢も見ていないから、どっちからさずかってもいいわけだ。」
そんなかってなことをいって、くわをかついで、出かけました。
ところで、そのとなりのおじいさんが、山で煙の出ているところを、どんどん、どんどん掘っていったところ、話のとおり、一つのかめを掘りあてました。
「さあ、でたぞ。大判小判いっぱいのかめだ。」
おじいさんはそれをだきあげ、穴《あな》の外へ運びだしました。そこで、いよいよふたをとってみて、びっくりしました。
なんと、それが中味が、ヘビやカエルやナメクジや、さわるもきたない虫ケラばかりです。おじいさんは、腹《はら》を立てました。
「あいつ、正直者のくせに、こんなにうそをいって、おれをだましやがった。ようし、おぼえておれ。」
となりのおじいさんは、そんなひとりごとをいって、とにかく、そのかめをかかえて、家へ帰ってきました。
そして、その晩のことです。となりの正直おじいさんの家の屋根の上へ、そのヘビのかめをかかえてあがりました。そこで屋根に穴をあけ、そこからヘビやカエルやナメクジを、ドシャドシャ、下へ投げこみました。
「さあ、正直じいさん、天から福がふってきたぞ。」
正直じいさんは、この声を聞いて、屋根裏《うら》のほうをみあげました。すると、ほんとうに、そこからピカピカの大判小判がふって、家じゅうにちらばりました。
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
正直じいさんは、そういって、天からさずかった福に、頭をさげてお礼をいいました。