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父子鷹46

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:油堀 まだ夜は明けない。靄が一ぱいで初夏の匂だけがその中からつーんと感じられる。 勝小吉は樺色の肩衣をつけ、袴の股立を高
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 油堀
 
 まだ夜は明けない。靄が一ぱいで初夏の匂だけがその中からつーんと感じられる。
 勝小吉は樺色の肩衣をつけ、袴の股立を高くとって、その靄の中を飛ぶように駈けている。深川油堀の家から、小石川御薬園裏の小普請御支配石川|右近将監《うこんしようげん》の下屋敷まで、遅くも|六つ半《しちじ》までに着かなくてはならない。
 こゝへ着いて夏でも冬でも、玄関の板の間に坐って平伏して御支配のお城へ登るのをお見送りするのだ。夏はいゝが、冬は寒風の吹きッさらし、慄える仲間が昨今十五人いる。
 右近将監がすうーっと前を通る。言葉をかけるどころか、見向きもしない。しかし小吉だけは近頃になって二度声をかけられた。
「どうだ」
「ははっ」
 板へ額をすりつける。それだけでも仲間の羨望は大変である。風の日も雪の日もこうして二年も通いつゞけて未だに一回のお声がかりもないものが凡そである。
 二度から三度目のお声がかりになってはじめて奥へ通され「逢対《あいたい》」という事になる。小普請《むやく》ものの御番入《おばんいり》即ち就職のこれがたった一つの道である。
 将監はもう六十を越したいゝ年だが、新規抱えの若い妾にうつゝを抜かして、表二番町の上屋敷から、些か保養と称してこゝのところずっと下屋敷住居をしている。十五人が暗い中《うち》から板の間に坐っていても将監はぬく/\と妾とねているのだ。
 この朝小吉が着いた時、用人小林が小さな声で耳打ちした。
「勝、今日は三度目のお声があるぞ」
「は、有難い事にございます」
「わしも及ぶ限り尻は押すが随分うまくやれ」
「はっ」
 もう将監登城の刻限近く、小林があたふたと奥から出て来て
「勝、御召である」
 といった。みんなはっとした。その燃ゆるような目に送られて奥へ入ったが、やがて将監のうしろに従って出仕を送って出て来た時の小吉の顔は、さっきとは人が変ったように眼が吊上って少し蒼ざめていた。
 深川へ戻る途中でぽつ/\と雨になった。その雨の遠い彼方に鶺鴒《せきれい》らしい野の鳥の鳴声が聞えるが、小吉は傘もなく、腕組をして、往来ですれ違う人の顔も見ず、早足で歩いている。
「笑わせやがる。いくら実父《さと》が金持でも、おやじはおやじおれはおれ、四十俵取りの小普請《むやくもん》に五百両などという大金がどうして出来るものか。御番入がしたい故、二年この方一朝も欠かさずこうやって通い詰めたがおれはもう嫌やになった」
 ひとり言の耳に
「あ、もし」
 二度目にやっとそれが入って、小吉が振返ったのは永代橋の丁度真ん中。
「わたしをお呼びですか」
「あ、やっぱりそうでございました。あなた様でございました」
「あゝ、あなたはあの時の神田の——」
「はい、黒門町の紙屋のせがれ長吉でございますよ」
「これはお見それ申して済まなかった。あの時は本当にお蔭で助かりました」
 対手《あいて》は黙って傘をさしかけて
「やっぱりあなたは御武家様でございましたね。どうも唯の乞食とは思われませんでしたよ」
「お恥しい始末」
 年をとった女の方と、きりゝッとした美しい娘の三人づれ。小吉は一礼して
「お連れがおありのようですから改めてお目にかゝります。確か村田さんと」
「はい、あれは、この度縁あってわたくし家内に迎えますもの、あちらはそのおふくろ様でござります」
 いっているが小吉はもうとっとと歩き出していた。
「もし、それではこのお傘なと」
 しかし答えもなく小吉はすでに駈け出していた。
「まあ何んというお人でござりましょう」
 娘は少し不機嫌に
「あの方は乞食をなさってお出でなのでございますか」
「わたしが伊勢へお抜詣《ぬけまいり》をした時に相生の坂であの方が乞食をしているのとお友達になりましてね。その時のお話に養子先きのお祖母《ばば》が余りいじめるので癪にさわって家を抜出して来たが、浜松の御城下で道中の胡麻の蠅に逢ってお金は固《もと》より着物も残らず持って行かれ、襦袢一枚に縄の帯、ひしゃくを一本、この姿にお成りだといってお貰いをしていました。あれはお互に十四、丁度四年前の話でしたっけ」
「あなたも乞食をなされたのでございますか」
「抜詣でお金もなし、いゝ修行になると思いわたしも一緒に暫く乞食をやりましたよ。大神宮の御師《おし》さんで竜太夫という人がありましてね、二人でこゝへ行って江戸の品川の青物屋だといっていやもう世話になりました。今の世には珍しいようないゝお方でした」
「さようでございますか。乞食をなされたのでございますか」
 娘は眉の濃い大きな目をぱち/\しながらそういったっきり、ぷいと横を向いて終った。
「お糸や、そうした修行はこの世の中の裏も表も見ます故、知らず識らず長吉さんの身のお為めになっているのでございますよ」
 おふくろがいったが、お糸は
「乞食までしなくもいゝと思いますっ」
 切口上にいってこっちを向こうともしなかった。
 小吉が油堀へ戻った時は、雨だというのに実父の男谷平蔵は熊井町河岸前へ投網《とあみ》に行ったといって留守であった。
「おやじもあゝいう人だ、真逆《まさか》、そんな金を出して迄とはいわないだろう」
 小吉は同じ地内の自分の住居の方へ戻ったが、養祖母《おばば》へもやがて妻になる二つ年下のお信へも、今日の事については一と言もいわなかった。
 その夜は篠をつくようなひどい土砂降り。
 小吉は、大きな眼を見張って瞬きもせず、息をつめてじっと実父《おやじ》平蔵の顔を見詰めている。
「川も澄んでばかりはいない。濁る事もある。今は丁度そういう世の中だ。お前はまだ子供の時分、屋敷の池へ入って泳ぐので、いつも水を濁らしては、わしに叱られた。が、どうだ、池の水はその時は濁ってもお前の成人と共に近頃はもう濁る事もなく、あのように澄んでいるではないか。な、今、五百両出してもお前が御番入をしたなら、親類縁者に鼻も高く、後々は結局水も澄んで、あゝいゝ事をした、これは安いものだったという事になるのだ。これが人間の世渡りだ」
 平蔵はそういって
「明朝早速金子をお届け申すがいゝ」
「真っ平です。わたしが御番入をしたいのは何にも自分の為めにではありません。将軍家《だんな》に命がけで御奉公を申上げ、それが取りも直さず、みんなの幸福《しあわせ》の一端になると思うからです」
「はっははゝ、お前は今年十七歳だったなあ。若いなあ。しかし、お前のいう事は間違ってはいないが、とにかく御番入が第一番の事だ。それが出来なくては御奉公も何にもないであろう」
「いゝえ、もう、わたしは諦めました。生涯|小普請《むやく》で結構です。そんなこと迄して御番入をしてもあんな石川右近将監などというものの下役で御奉公の出来る筈もなし、またこのからださえにおい染みるような気がしてなりません。あんな人間のところへよくも二年が間も通いつゞけたものです」
「わからぬ奴だ、今はそういう世の中だと云っているではないか。何事も賄賂《まいない》次第、利口な人間は巧みにそれを利用してそれによって自分の地位を築いて、その時はじめて将軍家《だんな》の為めに真の御奉公を申すのだ。舞台へ上らんで芝居が出来るか」
「何にも彼も嫌やです。わたしは今日まで父上だけは、そんな事をおっしゃるお方ではないと思っていました。みんなその賄賂《まいない》を持って行けといっても、父上だけは止せ、大切な天下の御職《おんしよく》を金で買うような事は止せとおっしゃって下さると思っていました」
「まあいゝ。どちらにしろ今夜一晩ゆっくり考えてみろ」
 小吉はむか/\した胸を両掌《りようて》で押さえるような恰好で自分の住居へ戻って来た。小吉が泳いでは父に叱られた油堀から水をひいた大きな池の向側に、離れのような一構えである。
 実父男谷平蔵の用人利平治が小吉のうしろから傘をさしかけてついて来た。小吉は、実母が中風にかゝり、その上早く亡くなって、子供の時からこのじいやに育てられたようなものである。
「若様よ、あなた様強情をお張りなさるは宜しくありませんよ。これ迄、御実家様《おさとさま》が御支配は固より頭取衆ばかりか、あの小林という用人の末にまでどれ程のお金をお費いなされたか知れませんのでございますよ。御支配様は、手びきの方があって二年も三年もお通いなさっても、蔭へ廻ってそっとお金をお使いなさらなくては一度のお声がかりもないのでございます。それをあなた様、二年そこ/\で御番入のお話が出るのなどは、みな/\御実家様のお力。御恩を有難い事に思召さなくては罰が当ります」
 小吉は、きっとした。
「利平治、お前、ほんとにそう思うか」
 利平治おやじは、暗い中で、じっと小吉を見ながら
「ははゝゝ。と申しませえでは、わたくしの役目が立ちませぬ故申しましたが、実は」
「実は?」
「嫌やなことでございますよ。賄賂で天下の御役をどうこうなど、誠に以て不都合千万。この利平治なら頭《てん》から断りますでござります。若様、いやもう石川右近将監など申す人間は、尊い徳川の御家を喰いつぶす獅子身中の虫というものでござりますよ」
「そうか。よし、おれは明朝と云わず、今夜、改めてしかと実父《ちゝ》へ断りを申そう。実に御政道は腐り果てている」
「御実父様《おさとさま》は人一倍お骨の固いお方なのでございますが、勝家という微禄な御家人の御養子になられた若様可愛さの余りに、あゝした事をなされまする。若様が飽迄も頑張りなされたら、表《うわ》べは何んといかめしゅう申されても内心はお喜びかも知れませぬよ」
「ほんに、そうであって呉れればいゝが」
「いえもう、それに違いありませぬ。しかし何んでござりますねえ。石川様とは、若様はまだお小さい頃よりいろ/\恨みがございますねえ。それはあの将監とて忘れてはおらぬ筈。知っていて若様の御番入のお肝煎《きもいり》をなさるのは、あれは唯々慾だけの仁でございますねえ」
「そう。あ、思い出した。あ奴の伜の太郎右衛門、女を見たような奴で、あ奴を駿河台の鵜殿鳩翁先生の道場で、木刀で無茶苦茶にぶちのめし、さんざ悪態をついて泣かしてやった事があったな」
「あれは丁度お十一の時でしたよ。勝は四十俵の小給者《こきゆうもの》だといってみんなの前で囃立てたら、あなた様がとう/\お腹をお立てなさいましてね。何しろ先生が忠也派一刀流の名人で、木刀の形ばかりをお教えなさる。それが真剣に見えたというお方。若様はあの時はもう先生から左右という伝授を受けてお出でなされたのでございますからね」
「でもあの太郎右衛門は昨今|御徒頭《おかちがしら》に出ているというから口惜しい事だ」
「その中に、また何処かでぶちのめしておやりなされませ」
「よし」
「ところで」
 と利平治は
「先程御実父様の投網の御自慢のお獲物を、亀沢町の団野真帆斎先生の御道場へお届けに上りました時に、先生が、明日は御当流藤川弥司郎右衛門先生の御正統酒井良佑と神道無念流の秋山要介との試合があるが、勝は知ってであろうかとおっしゃってで御座りましたよ」
「いや、知らぬ。場所は何処、刻限は?」
「団子坂の経学師範太田錦城先生の御子息栄太郎様のお屋敷内、|午の刻《じゆうにじ》と申されていられました」
「おう、これはどっちがお勝ちなさっても少々うるさい事になる試合だ。行司はどなた様だろうな」
「団野先生もおもらしで御座いました。行司は何んでも駿河台の先生とか」
「ほう、鵜殿鳩翁先生か。先ず当今に於てはそんなところであろう。秋山は名うての飲んだくれで、無頼無法の子分などが大勢ついている。これ迄の試合もよきにつけ悪しきにつけ、それが必ず後々の仇をするという。鋭いという事だけについて云えば先ず日本に二人とはない程の剣客だ。わたしも子供の頃一度より拝見した事はないが、それが子供にさえ感じられる火の出るようなものだった。一方の酒井先生も流石円熟の車坂の井上伝兵衛先生も三本に二本は譲らねばならぬというお方。所詮は御主君たる榊原侯十五万石のお手前にも敗けられぬ試合。さて勝ったとなったら後はどうなるか。どうして又、酒井先生がそんな事になったのだろう」
「亀沢町でも門人方が話してお出ででございました。何んでも太田錦城先生が、秋山先生を日本一だと云ったところ、お講義をいたゞきに行っていられた酒井先生がそんな事はない、あの人はわたくしにも勝つ事は出来ますまいといったところから話がもつれたのだそうで——でもね若様、秋山要介々々といって鬼のように恐れられたのは昔の事、あの方もすっかり変ったとの噂もござりますよ」
「あれ程の方だ、唯子分共がうるさいのだ。どっちにしても明日は是非拝見に伺わなくてはならぬ。石川どころの騒ぎではなくなったな」
 雨の中からかち/\と拍子木の音がして
「|四つ《じゆうじ》でござい——四つでござい」
 町内の番太郎の時を知らせる声がかすかに聞えた。
 その雨も夜っぴて降ったが、夜明けから、からりと晴れて空は広々として計り知れなく青かった。雲一つ無い。
 父の平蔵が、利平治に小吉を呼びによこした時は、小吉はもう住居にはいなかった。
「困った奴だ」
 平蔵は苦笑した。
「とう/\生涯の小普請《むやく》か」
「若様にはその方がおよろしゅう御座りましょう」
「はっ/\。そう云えばそうかも知れぬ。あ奴は腐敗堕落地獄の底にある今の御政道に、素直に服して上役にあげへつらいおれる奴ではない。御番入をしたら却ってむずかしい事をひき起し、閉門、切腹などと、こちらが心配しなくてはならぬかも知れんのう」
「さようで御座ります。若様のようなお方はお役人などになられるより巷にいられます方が、ところの皆々の幸福《しあわせ》で御座ります」
「とう/\わしの黒星か。無駄を遣うて終った。はっ/\は。お前までがその気では、とても叶わぬ」
「若様の、重箱の隅を黒|もじ《ヽヽ》でつゝきまするようなお役人のお姿などは、凡そ板につかぬ事でござりましょうから」
「悪い奴め、お前があのような人間に仕上げたわ」
「滅相もござりませぬ」
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