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父子鷹47

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:昨日と今日 御番入の件は兎も角として、男谷としてはこのまゝでも済まされない。石川右近将監との間に立って取持をした者の顔も
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 昨日と今日
 
 御番入の件は兎も角として、男谷としてはこのまゝでも済まされない。石川右近将監との間に立って取持をした者の顔もあるので、平蔵にいいつけられて、利平治は石川の下屋敷へ行って、勝小吉は些か乍ら病気の様子につき当分御機嫌伺いに参上致し兼ねますと口上を述べて、菓子折の底に小判五十両を敷いて、態良く将監の無心を断って帰った。
 小吉はそんな事は知らず、亀沢町に団野先生を訪ねたが、真帆斎(源之進義高)は、わたしはもう年でそういう面倒な試合を見る事には心がすゝまないから、おのし一人で行くがいゝ、どうせ向うへ行けば大勢知った顔もいるし、行司の鵜殿先生はおのしが最初に形の手ほどきを受けたお方だから万端好都合だろう、よく拝見して来なさいというので、小吉は一人でまぶしさに眼を細めて、回向院からちょいと来た元町の辻行灯のところを歩いていたら、思いがけずぱったりと出逢った奴がある。唐桟の袷に下馬を重ね、幅狭の帯。裾先きをつまみ上げて股倉まで見えるような風態。
「おい、何処へ行く」
「何処へ行くもありませんよ」
「松坂町の仕立屋の弁治は近頃は巾着切で仲間じゃあ大そうな羽振りだと、前町《まえまち》の金太郎からきいたが、本当か」
「へっ/\/\。のっけから巾着切かときかれて、そうですとも答えられやせんよ」
「おう——、こういうお天気のいゝ時は、お前のその額の疵痕が滅法目につくな。おれは悪い事をして終ったものだ」
「金太郎だってあっしだってお互に餓鬼の時分の女の子の飯事《まゝごと》見てえな遊びの喧嘩、あゝたが悪いんじゃあありやせんよ。武士の子もねえ町人の子もねえ、子供の喧嘩は親代々|深川《ところ》の気質《かたぎ》だから」
「まあ勘弁してくれ」
 さっきからちりん/\ちりん/\いゝ音色がしていたが、小泉町の露路の奥から、一ぱいに飾った大きな荷を担いで風鈴屋が、二人の立話の横をすりぬけた。
「こうお天気がいゝと風鈴屋も満更じゃあござんせんが、江戸っ子は気が早え、あれは先ず風鈴の走りですねえ」
「うむ、ところで弁治、わたしはこれから団子坂迄行くんで急いでいるが、どうだ、一度、屋敷へ遊びに来ないか」
「いや、そ奴あ懲々《こりごり》だ、ああたのところの養祖母様《おばゞさま》は怖くていけやせんよ」
「そんな事はない。四、五ン日前、緑町の縫箔やの長太に逢ったら、あ奴も遊びに来るといっていた。来いよ」
「じゃあ、あ奴と一緒に行きやしょうかね」
「是非来い」
「へえ」
 小吉が団子坂へ着いた時は、びっしょりと汗になっていた。ひょっとしたら袷の背中へぬけているかも知れない。
 集っているのは道場の主か、然《さ》も無くばその紹介状《ひきあいじよう》を持って来ているもので、凡そ三、四十名にも近かったが、太田錦城の庭の三方には紅白の幕を張り、その前に茣蓙を敷いて拝見の者が各々処を見つけて坐る。南に向いた屋敷の縁側には主人の錦城をはじめずらりと居並んではいるが、小吉には今日の行司を勤める鵜殿甚左衛門鳩翁の外は大抵は知らぬ人であった。
 庭はずうーっと青芝で誰でも跣足《はだし》で踏み歩いて見たいような気持がする。
 小吉は東側へ案内された。もし試合が遅れて昼をすぎて西陽《にしび》になったりしては困ると思った。
「世の中には、おれと同じ馬鹿が大勢いるものだ」
 誰やら一人ごとをいったのが、ふと小吉に聞こえた。思わず、見ると、濃い鼠色の紬《つむぎ》の袷に、夏の生《き》びらの羽織を来て、月代《さかやき》を延ばした二十四、五、もみあげの下の肉ががっくりと落ちた色の真っ蒼な侍が半分眼を閉じたような恰好で、口をゆがめて冷めたい笑いを浮かべている。それがまたふと小吉を見て出しぬけに
「おい、おのし、何処の稽古場だ?」
 皺がれた声だった。小吉はむかっとした。黙っていた。
「何処の先生に教わっているのかというのだよ」
「おのしは?」
「南割下水一刀流近藤弥之助方の食客。渡辺兵庫。師匠はない」
「わたしは本所亀沢町直心影流団野——」
「真帆斎先生門人か。が惜しむらくはおのしの先生もすでに老いたな」
「何?」
「しっ、しっ」
 突然横から声がかゝった。
「お静かになされ」
「ほう、これは叱られた」
 兵庫はせゝら笑うような調子でそれっきり堅く口をつぐんで終った。
 途端に|午の刻《じゆうにじ》。試合を告げる小刻みな太鼓の音と共に、正面から行司鵜殿先生が、左右の幕張の端から、東、秋山要介、西、酒井良佑が姿を現した。
 秋山要介はすでに五十を越え、痩せて枯松の如く眦《まなじり》が吊上る程に結んだ総髪は、半《なかば》の上も真っ白い。眼を細め、じっと良佑を見ながら、年若を対手に、こちらから一礼した。破落戸《ごろつき》で大酒家で、試合の後にはきっといざこざが付纏うという。良佑は二十五歳、しかも六尺に近い肥満の大兵で二十人力との噂。筋肉隆々として逞ましい腕には稽古疵の痕が見えた。
 二人は静かに面金《めんがね》をつけた。その面金にきら/\と真昼の陽が当って、時々、大空へ向って、すうーっ、すうーっと矢のように閃めく。
 鵜殿は麻上下で、小刀も無く、白扇をしずかに持って仕度の整うのを待っている。庭内はしーんとした。固唾を呑んでいるというのだろう。
「いざッ!」
 鋭い良佑の声。
「お手軟らかに」
 低い秋山の声。鵜殿の白扇が一旦ぱっと前へ突出されて
「五本勝負」
 声と共に、——これを手許へ引く。同時に、二人は跳返るように三間ばかりも後ろへ飛退《とびすさ》った。
 暫くそのまゝ石像のように動かぬ。やがて呼吸を詰めていた良佑の竹刀がじり/\と大上段にふりかぶって行った。
「増上慢奴!」
 渡辺兵庫はひとり言をいって片頬をゆがめながら
「おい、どうだ、わかるか」
 小吉へいった。小吉は黙っている。
「わかるまい。秋山は一本参る」
 兵庫の薄気味悪い科白《せりふ》が終ったか終らないに
「面、一本ッ」
 鵜殿の帛《きぬ》を破るような声がした。
 二本目|籠手《こて》、三本目は胴。五本勝負はこれで終った。秋山は芝生へ片膝をついて、落着いて面金をとり
「まことに御見事。秋山生涯に、あなた程の達人にお目にかゝった事はない。有難うござった」
 といった。呼吸一つはずんでいず、顔色も常と少しも変らなかったが、勝った方の良佑は満面の汗がしたゝり落ちて、俄かにこれに対する挨拶の言葉も出なかった。
「秋山はすっかり人間が出来た」
 とまた兵庫。
「は?」
 と小吉がそっちへ向いた。
「昨日の彼は今日の彼に非ずさ。秋山要介はもう昨日の秋山要介ではなくなっている。放蕩無頼理不尽の彼、齢五十を過ぎてはじめて人間の真髄をつかんだようだ。これが人間というものの尊さだな」
 みんな雪崩《なだ》れるように帰り出した。小吉もその中に交って太田家の門を潜ったが、兵庫がすぐうしろを歩いていた。振返った。兵庫はにこりとしたが何んにもいわなかった。
「昨日の彼は必ずしも今日の彼に非ずさ」
 さっきいったその人の言葉が、大声でまだ耳元に繰返されているようで仕方がない。
 小吉は歩き乍ら、何んだか、自分の目の先きがまぶしい位に明るくなって来るような気がしたり、また忽ちにしてそれが一寸先きも見えない真っ暗闇になるような気がしたり、自分で、これから先きの自分をどう考えたらいゝのか、それが深い靄の中に包まれたようになった。
 不忍の池の端へ出て下谷御数寄屋町を通ったら、ふと大きな声で駒鳥の鳴いているのが耳について、はっと我に返ったような気持がした。耳を澄ませると駒鳥ばかりではない、いろ/\な小鳥が鳴いている。
 直ぐ鼻っ先きにその小鳥屋があった。店一杯に声桶《こおけ》を重ね、障子をはめたのもあり、はずしたのもあり、駒鳥が奥の方からぱっと籠口に飛び出して来て、大きな声で鳴く。
 小吉は何気なしにその片隅に置いてある立派な金蒔絵の鶉の胴丸籠を見ていた。
 店の奥から人の出て来る気配。
「おゝ、また逢いましたね」
 小吉に云われた対手は紙屋のせがれ長吉。
「いよ/\不思議な御縁でございます。わたくしの家はこゝからはすぐ近くでございますから、今日はどうぞお寄りなさって下さいまし」
「有難う」
 小吉はこの人のところへ寄って無駄ばなしでもしていたら、何にかこう、さっきの試合以来何んという事もなく胸につかえているようなものが、少しは薄らぐかも知れないと思って、寄る気になった。早く亀沢町の団野先生のところへ戻って試合の有様を話したい気もあったにはあったが。
 長吉は手にくる/\巻きにした大判の紙を持って小吉と並ぶようにして歩いた。何にか書いてあるようだ。
「わたしはあの小鳥屋にある金蒔絵の鶉籠を見ていたのだが、あなたは余程お親しいのか」
「いゝえ」
 長吉は首をふって
「時々、珍しい小鳥が参りますと、それを写しに参りますので」
「絵を書きやンすか」
「はい。わたくしは泥鏝絵《どろごてえ》が好きでございましてね。漆喰絵《しつくいえ》でございますよ。泥鏝を使い漆喰で書くのです」
「ふむ」
「元来紙屋は嫌やですから、おやじどのが大層立腹で困って居ります」
「どうしてですか」
「今嫁を迎えようという立派な商人《あきんど》のせがれが、泥鏝などを手に左官の真似をしてどうなるのだ。漆喰などは職人のいじるもの、並の絵ならばともかく、お前のは左官絵だと、——でも、わたくしはこれが好きなのでございますよ。次第によっては家を勘当されても仕方がないと思っている。今日も今日とて|大るり《ヽヽヽ》と申します鳥が来たとの知らせで出て参りましたが、戻りましたらおやじどのがまたどのように悪態を申しますか。でもどうかお気にしないで下さい。そして是非、わたしの鏝絵を見てやって下さい。あなたは御武家ですから、きっと解っていたゞけると思うのですよ」
「いやあ、わたしには絵のことなどはまるでわからない。わたしはね、七つの時から柔術や馬術をやり十歳からは剣術をやって、お恥しいが今日までまるで学問というものをしなかった。十二歳の時に兄の彦四郎に無理無態に林大学頭様のところへ連れて行かれたが学問が嫌いで、いつもいつもそっと裏庭の垣根をくゞっては隣りの馬場へ出て行って馬にばかり乗っていたから、直ぐに破門をされて終った。先ずこんな始末だ」
「何れにしましても是非一度見て下さいまし。わたくしは朝から晩までおやじどのに、けなされているだけではどうにも納得が参らないのでございますよ」
 長吉は、もう嫁を迎えるという年なのに、まるで子供のように年下の小吉の袖をとらえて、自分が先きに立ってぐん/\と引っ張るように歩いた。
 小吉は、世の中が心の儘にならないのは、自分一人では無かったというような気がして何にかしらほっとした。
 黒門町の表通りへ出ると、刀屋がずらりと並んでいる。ぽつんとその間に挟まれたように紙屋村田の暖簾《のれん》が垂れて、これが晴れ渡った初夏の風に時々ゆら/\とゆれた。高い屋根の大きな店である。
 長吉は、裏口からそうーっと土間伝いに自分の居間らしい陽当りの悪い一と間へ小吉をつれて行った。
 大小いろ/\な板ぎれが、そちこちに立掛けられて、如何にもいろ/\な絵がまるで浮彫りしたように描けている。これが漆喰絵というものかと、小吉は土間へ立ったまゝで、じっとこれを見詰めていた。支那風の山水もあるし、小鳥や獣もあるが、真っ正面に置いてある象に腰をかけて文をよんでいる遊女らしいものの絵は素人眼にも稚拙ではあるが、何にか強く閃めいているのが小吉にもぐん/\迫って来るように感じられた。
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