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創造の人生60

时间: 2020-10-28    进入日语论坛
核心提示:疑念 昭和四十年代前半は、井深にとってもソニーにとっても、はじめて直面する試練の時代であった。それは数字の上にもハッキリ
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 疑念
 
 昭和四十年代前半は、井深にとってもソニーにとっても、はじめて直面する試練の時代であった。それは数字の上にもハッキリ出ている。ソニーの総資本に対する利益率は、四十二年の七・四パーセントをピークに四十四年には五・七パーセントに落ちた。同業他社の松下電器の一〇パーセント台は別格としても、赤井電機(アカイ)は一六・八パーセント、パイオニア、アルプス電気などが九パーセント以上の高率を維持しているのにである。
〈四十年不況〉という外的な要因もあったが、最大の原因は、同業他社との技術格差が縮まってきたことで、かつてのように一点集中主義で先行ダッシュする独特の経営に限界が見えてきたといえる。
 現に、井深は、四十二年の年頭に「世界中の企業がソニーの行き方に注目し、ソニーのあとを急追している。そのためにも今年は確固たる社内体制を確立しなければならない」と、全社員に訴えている。そして四十三年の年頭には「ソニーは、いまや〈特別の会社〉でなくなった。若く、身軽で、弾力性のあるのが特長だったはずのソニーも、老大国の仲間入りをはじめたのではないか」と猛反省を促し、さらに四十四年年頭には、「開発、生産、管理を問わず、あらゆる分野で他社に追いつかれ、追い越されている」と、指摘している。
 こうした環境のもとで、気を吐いていたのは〈トリニトロン〉カラーテレビである。四十三年四月、ソニービルの八階ホールで報道関係者に完成発表をした直後、各紙は「トリニトロンは世界ではじめて単電子銃三ビーム方式のカラーブラウン管を実用化したもので、画面がぐんと鮮明になり、消費電力が少なくてすむうえ、ブラウン管の部品が従来の半分に減るため、小型、軽量化が可能になる」と報じ、株価も五九円も跳ね上がるほど反響を呼んだ。
 しかし、カラーテレビで一日の長があるアメリカ市場での受け止め方は、意外に冷たかった。同業各社の首脳は「受像画面を小さくすれば、どんな方式でも映像が鮮明になるのは当然」とか「シャドウマスクは改良がすすみ、きれいな画像と画質が得られるようになっている。新鮮味がない」と、鼻先であしらった。また「七インチのマイクロカラーテレビが四〇〇ドル(一四万四〇〇〇円)とは、いくらソニーでも高すぎる」と、ソニーの価格設定に不満を漏らす販売業者もあった。
 もっと露骨な反応を示したのは、RCA社のロバート・W・サーノフ社長である。サーノフは、年次総会の席で株主の質問に、次のように答えたという。
「ソニー方式は、きわめてむずかしい道を歩むことになるだろう。経済ベースによる大量生産の試練に耐えてきたカラーシステムは、わがRCA社が開発したシャドウマスク方式だけである」
 だが、井深も、盛田も、海の向こうの批判をまったく気にしなかった。盛田は、取材に訪れた『ビジネス・ウィーク』の記者に「いつもと同じですね」と笑って答えたという。つまり、盛田は、アメリカ側の反応は、トランジスタラジオやマイクロテレビを発表したときの態度とまったく変わっていないといいたかったのだ。盛田は自社技術をそれほど高く評価していた。
 その通りになった。四十三年一〇月、トリニトロンカラーテレビ発売以来、内外で好調な売行きをみせ、四十四年度には売上高一〇〇〇億円企業の仲間入りをした。ソニーの単電子銃三ビーム方式(トリニトロン)を鼻であしらったアメリカのRCAやGE、フィルコ、フォード、ウェスチングハウスなども「ソニーシステムの利用を考えたい。資料を提供してほしい」と、申し入れてきた。ソニーはトリニトロンカラーテレビを開発したことで、メジャーリーグと対等に戦えるまでの規模に成長したのである。
 しかし、井深は、前述のように危機感を強めていた。たしかにソニーは大きく成長した。四十三年の大崎工場に続いて、四十四年には東京・芝浦、愛知県稲沢に大型工場を建設し、仙台、厚木、羽田工場の増設も終わり、従業員も一万人の大台を突破した。製品も、トロニトロンカラーテレビ、エレクトリックマイク内蔵のテープコーダ、カラービデオプレーヤなど、世界に誇れる製品が戦列に加わり、商品構成も多彩になった。
 だが同業他社の技術も格段の進歩をとげ、かつてのテープコーダ、トランジスタラジオの時代のように、一つの開発、一つの製品で業界地図を塗り変えることは非常にむずかしくなっている。しかも、ソニーの信条であった「よそにないものをつくる」ことも、むかしと違い、驚くほど金と時間がかかるようになった。それをトリニトロンの開発を通じていやというほど味わった。そんなことを考えるとウカウカしていられないというのが、井深の偽らざる気持ちであった。
 井深が新幹線とNASAのシステムに目をつけたのはそれがきっかけである。つまり、次の飛躍に備え、ソニーの体質をどう変えていくか、その緒口を巨大プロジェクトを通じて学んでみたいと思ったのだ。
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