質問
「二六時中」とはどういう意味ですか?
こたえ
「二六時中にろくじちゅう」という語は、むかし1日が12時(12刻)であったことから言われるものです。「2×6=12」ということです。あるいは、昼の6時(6刻)と夜の6時(6刻)との2つの6時で12時(つまり、「6+6=12」)とも考えられます。現在では、1日を24時間とするのがふつうですので、「四六時中」ということが多くなっています。これは、「二六時中」にならって言い換えたより新しい語です。
同じような言い方に「二八そば(にはちそば)」があります。これは、そば粉八割とうどん粉二割で打つことから「2+8=16」で「二八」だという解釈と、1杯16文であったことから「2×8=16」で「二八」であるという解釈とがあります。実際に、江戸時代には12文で売られたそばやうどんを「二六(にろく)」、1合12文の酒屋を「二六屋(にろくや)」などといっていましたし、16歳は「二八の歳(にはちのとし)」、15歳は「三五の歳(さんごのとし)」、十五夜は「三五の月(さんごのつき)」、十六夜(いざよい)は「二八の月(にはちのつき)」などともいわれました(以上『国語大辞典』より)。十五という数字を引き出すための「三五(さんご)、十五の春のこと~」のような表現も文芸などで用いられています。また、掛け算だけでなく、遊里などでは「五郎兵衛」のような名の客を「二三(にさん)」のように足し算であらわして替名(かえな)としていたともいわれます(『国語大辞典』より)。
日本では、比較的古くから数や数式を使う表現が小粋でしゃれた表現(知的なおもしろさのある表現)ととらえられていたようで、特にしゃれを好んだ江戸の人たちにはよく用いられました。何をおもしろいと感じるかは人それぞれ違うものですので、多くの現代人にとっては、別におもしろくもないものかもしれませんが、昔の人には「一日中」や「十二時」といわず、わざわざ掛け算(あるいは足し算)にして「二六時」としたところが、何ともおかしみを誘うものに感じられたのでしょう。