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脱線事故 歴代3社長無罪主張
7月6日 18時34分
107人が死亡したJR福知山線の脱線事故で、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されたJR西日本の歴代の社長の初公判が開かれました。3人の元社長は、いずれも「事故は予測できなかった」と無罪を主張しました。
3人の歴代社長のうち、元相談役の井手 正敬(まさたか)被告は、国鉄の民営化以降、強力なリーダーシップでJR西日本の経営基盤を築きました。事故当時会長だった南谷(なんや)昌二郎(しょうじろう)被告、それに事故当時の社長垣内 剛被告。検察は不起訴にしましたが、検察審査会の議決で強制的に起訴され、事故を防ぐ対策を怠ったとして、業務上過失致死傷の罪に問われています。
井手元相談役は、これまで公の場で遺族や被害者に謝罪したことはありませんでした。きょうの初公判で、「経営に携わったものとしてまことに申し訳なく、被害者の方々におわび申し上げます」と初めて謝罪の言葉を述べたあと、遺族に頭を下げ、傍聴席にも一礼しました。一方、「あのような事故が起きると想定することはまったくできなかった」と述べ、無罪を主張しました。南谷元会長と垣内元社長も、「事故は予測できなかった」と無罪を主張しました。
元社長3人の無罪の主張について、遺族は、「安全を守るのは誰なんですかというのを逆に聞きたいですよね。予見できなかったから無罪なんですというのも、なんかああいう言い方では納得できないですね。」
裁判は、事故の危険性を認識していたかや、ATS自動列車停止装置の設置を怠ったといえるかが最大な争点です。
検察官役の指定弁護士は冒頭陳述で、「現場がほかに例を見ない形で、急なカーブに変更されて、脱線事故の危険性が高まったことを認識できたはずだ。ATSの設置を指示する必要があった」と指摘しました。
一方、歴代社長の弁護側は、「個別のカーブの安全性は担当の部署に任せていて、逐一(ちくいち)検討する立場になかった。現場のカーブが危険という認識はなく、当時、ATSの設置も義務づけられていなかった」と反論しました。
この事故では、当時、鉄道本部長だった山崎正夫元社長が検察に起訴され、一審で無罪が確定しています。
3人の歴代社長の裁判は、来年夏以降に判決が言い渡される見通しです。