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中国からのツアー 扱い控える方針
7月9日 17時52分
政府が誘致を進めている中国からの観光客、国内各地で買い物をする大勢の中国人観光客の姿も珍しくありません。こうしたなか、中国からの団体ツアーを扱う日本の旅行会社の70パーセント以上は、採算があわないとして、取り扱いを中止したり、いま以上の取り扱いを控える方針であることがわかりました。
きょう、神戸港に入港した世界最大級の大型クルーズ船、乗客の9割は中国人観光客です。日本政府は、中国からの観光客の誘致を成長戦力の柱の1つと位置づけ、積極的に進めています。
おととしには、中国人の個人向け観光ビザの発給要件を日本円で年収350万円以上のいわゆる「富裕層」に限定していたのを年収85万円ほどの「中間層」にまで広げました。その結果、中国からの観光客の数が急増、去年は東日本大震災の影響で減りましたが、ことしは、おととしを上回るペースで増えています。
ところが、最近、国内のホテルなどで対応に変化が見られます。浜松市内のこちらのホテルでは、中国からの団体ツアーの受け入れをことし5月から控えるようになりました。「増えるのはいいけど、利益が上がらない。それではまた問題になるので、ここはひとつ見つめなおしましょうねと。」こうした変化の背景には、団体ツアーの価格を低く抑える動きが強まっていることがあります。
日本の旅行会社は、中国国内の営業活動を原則として禁止されています。このため、中国の旅行会社を介し、その会社が指定した価格で中国からの団体ツアーを請け負っています。各旅行会社によりますと、中国の旅行会社同士の競争が年々激化し、日本の旅行会社に安い価格で請け負うよう要求してくるというのです。
中国からの団体ツアーの取り扱いを中止した東京千代田区の旅行会社です。以前は、東京大阪間を5泊程度で移動し、京都や富士山などを見て回る「ゴールデンルート」と呼ばれるツアーを扱っていましたが、中国の旅行会社から価格を1人あたり1万円程度にまで下げることを認められました。「6日間で1万円とか、あるいは、もっとないとかというようなことも聞いていますので、そういうようになるとは、私どもはそれに太刀打ちできません。」
NHKが中国からの団体ツアーを扱う日本の旅行会社37社を対象に調査したところ、「いま以上の取り扱いを控える」と回答したのが65パーセント、「取り扱いを中止した」と回答したのが11パーセントに上りました。これらの会社すべてが採算があわないからだとしています。
中国からの観光客の誘致を進める日本政府は、どう対応するのでしょうか。観光庁は、各旅行会社に対しては、団体ツアーの価格を高めるため、ツアー先を東京や大阪以外にも広げ、観光の質を向上させることや、「富裕層」を対象にした旅行プランを積極的に提供することなどを求めることにしています。
「リピーターで来る方というのは、大体個人旅行になる傾向があります。宿なども少しグレードが高くなるという傾向にありますので、つまり、リピーターにたくさんに何回も来ていただくと、リピーターとして来ていただくと、そういう方策をとっていく必要があると思っております。」