全国約半数の土地 はっきりしないまま
7月20日 19時すぎ
津波で家を失った人たちに、いま立ちはだかる壁があります。土地を売って移り住みたくても、土地の境界線がはっきりしないため、売るのに時間がかかっているんです。行政が把握している土地の境界線が、住民の考えていた境界線と合っていなかったことが大きな原因です。実は、こうした土地は、全国のおよそ半数にも上っていて、国は、被災地以外でも、境界線を決める作業を急ぐことにしています。
津波で多くの住宅が流された仙台市若林区の荒浜地区を特殊な車が走ります。6台のカメラやレーザーで地形を正確に把握する装置など備えています。この車で集めたデータから、土地の境界線を決めるのです。
仙台市は、荒浜地区の集団移転を進めるため、住民から土地を買い取る計画を立てています。ところが、買い取りには、予想よりも時間がかかっています。住民ごとに所有する土地の境界線がわからなくなっているためです。
「境界ぐいがなくなってしまったり、また、津波で土に埋まってしまったりとか、ブロック塀の基礎が埋まってしまったり、なくなってしまったりとか、してますので、非常に測量は困難な状況になってます。」
さらに、大きな問題があります。法務局にある土地の境界線を示す公図は126年前のもので、いまの住民が考えている境界線とは合わなくなっているのです。その例です。塀で囲まれた2つの住宅。住民は、互いに塀で区切られたところが土地の境界だと考えていました。ところが、公図では、塀と土地の境界が一致しないことがあります。この場合、土地の売買には、時間と手間がかかります。本来は、市町村が測量などをもとに境界線をはっきりさせる地積調査をすることになっていますが、人手や費用などの問題で、全国で見ても調査は進んでいません。
赤い部分は、地積調査が終わった面積が全体の20パーセント未満の府県です。なかでも、京都や大阪、三重では10パーセントにも達していません。そして、全国平均でも、50パーセントの土地で調査が終わっていません。大きな災害が起きれば、やはり土地の買い取りなどに時間がかかり、復興への影響が出るおそれがあるのです。
「これから、震災の危惧が相当ありますので、そういったところで、本当に事業をどんどん進めていかないといけないなというふうに思ってます。」
しかし、これまでのように、三脚を立てて測量を繰り返す方法は、時間がかかります。そこで新たに導入されたのが,この自動車です。走りながら、地形データを三次元で解析することができます。誤差10センチ以内という正確な測量データを集めることで、土地の境界線を決めるのに役だちます。測量にかかる時間を大幅に短縮でき、年内には境界線を決められそうだということです。
「被災された方、集団移転を希望される方の、1日でも早い移転につながるように努めてまいりたいと思っております。」
国土交通省は、この技術をほかの地域にも導入したり、大地震が予想される東海地方を中心に、国から市町村に補助する予算を増やしたりして、土地の境界線を決める作業を急ぐことにしています。