日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

くちづけ07

时间: 2018-06-26    进入日语论坛
核心提示:訪問客 あ、あの人だ。 足音だけで誰と聞き分けられるなんてこと。そんなの、歌の中ぐらいのもんだと思っていた。 でも、本当
(单词翻译:双击或拖选)
 訪問客
 
 
 あ、あの人だ……。
 
 足音だけで誰と聞き分けられるなんてこと——。そんなの、歌の中ぐらいのもんだと思っていた。
 
 でも、本当にこのとき、亜紀は、
 
「あの足音、君原さんじゃないのかな」
 
 と思っていたのである。
 
 いつもの土手の道を歩く亜紀、そこへ後ろから近付いて来る足音……。
 
「亜紀君!」
 
 呼ばれて、びっくりする。
 
「君原さん!」
 
 嘘《うそ》みたい。本当に? 振り返ると、確かに君原勇紀がトレーナー姿で走って来る。
 
「——やあ!」
 
 と、追いついて足を止め、息を弾ませると、首にかけたタオルで額の汗を拭《ぬぐ》った。
 
「毎日、走ってるんですか?」
 
「もちろん。でも、君に会えないんで、つまらなかった。前はよく出会ってたのにな。知り合いになると、却《かえ》って会えないもんだね」
 
 亜紀だって、もちろんこの君原にキスされたことを忘れてはいない。でも、あれから半月近くたっていたから、そう照れずにすんだ。
 
「あのコンビニ、行ってるかい?」
 
 と、君原が訊《き》く。
 
「ときどき。あのときの強盗、どうなったのかなあ」
 
 と、亜紀は思い出して、「何か表彰とか、されなかったんですか?」
 
 学校帰りの亜紀は制服姿ではあったが、もう十月に入り、長《なが》袖《そで》に変っている。
 
「レジの子に名前とか訊かれたけどね。知らないことにしといてくれって頼んだ」
 
 と、肩をすくめて、「あの男の子は?」
 
「モンちゃん? 今、クラブが忙しくて、遅いみたい」
 
 門井勇一郎とはキスしたところを亜紀の母親の陽子に見られ、それ以来顔を合せていない。だから、「クラブが忙しい」というのも亜紀の想像だった。
 
 でも、間違いでもあるまい。じき、十月十日、体育祭が近付いている。亜紀の所は女子校だから大したことをやるわけじゃないが、勇一郎の方はそうもいくまい。
 
 並んで歩きながら、
 
「秋って、みんな元気になるんだ」
 
 と、亜紀はため息をついた。
 
「元気になっちゃいけないみたいだね」
 
「夏バテしてるときなんて、余計なことする元気ないでしょ。でも、涼しくなるとみんなうちにじっとしていられなくなって……」
 
 亜紀は憂《ゆう》鬱《うつ》そうな顔をしていた。
 
「何か心配ごと?」
 
「おじいちゃんが……。同居してるんですけど、ここんとこ、よく外泊してくるの」
 
 亜紀の心配が、君原にはよく分らないようだった。
 
 亜紀の説明を聞いて、君原は肯《うなず》くと、
 
「でも、大人同士のことだからな、干渉するわけにはいかないから」
 
「ええ、分ってるんです、それは。ただ、お母さんもお父さんも苛《いら》々《いら》してて。おじいちゃんのことで、こっちがもめるんだもの。それがいやで」
 
「なるほど。——その相手の女性って、会ったことあるの?」
 
「いいえ。おじいちゃん。絶対そんなこと、認めないもの」
 
 亜紀は、土手の道を下りると、自宅への道を辿《たど》りつつ、「——君原さんに関係ないのに。ごめんなさい」
 
 と言った。
 
 君原のことを、よく知っているわけでもないのに、どうしてこんな話をしてるんだろう? つい何でもしゃべっていいような気がしてまうのだ。
 
「いいさ。君だって、誰か聞いてくれた方が気が楽になるだろ」
 
「ええ。でも……」
 
「ね、十日は体育祭?」
 
「そうです」
 
「じゃ、次の日は代休だろ? 何か予定はある?」
 
「いえ……。今のところ、別に」
 
「じゃあ、僕と付合ってくれないか。できれば夕ご飯まで。それがまずかったら、夕方までには送ってくるよ」
 
 亜紀は、自宅の近くまで来ていた。
 
「それって……」
 
「デートの誘い。といって、危険はないよ。保証付さ」
 
 亜紀はちょっと笑って、
 
「分りました」
 
「じゃ、いいんだね?」
 
「はい」
 
「電話してもいいかい?」
 
「ええ」
 
「やった!」
 
 と、君原は飛び上ると、そのまま駆け出して行く。
 
 亜紀が呆《あつ》気《け》に取られて見送っていると、君原はクルリと振り向き、駆け戻って来て、
 
「電話番号、聞いてなかった」
 
 と、息を弾ませた。
 
 亜紀がメモ用紙に番号を書いて渡すと、今度は振り向きもせず、一気に駆けて行く。
 
「——いいのかね、本当に」
 
 と呟《つぶや》いたのは、OKした自分自身へだった。
 
 さて、今日はお母さんもフランス語の教室だと言ってたな。
 
 鍵《かぎ》を出して、玄関のドアを開けると、
 
「あの、ちょっと」
 
 と、呼ばれて振り返る。
 
 色白の、ふっくらとした女の人が、スーツ姿で立っていた。
 
 誰だろう?
 
 亜紀の見《み》憶《おぼ》えのない顔である。
 
「——何でしょうか?」
 
「あなた……ここの娘さん?」
 
 年齢は三十くらいか。童顔なのでよく分らないが、ともかく身につけている物がスーツもバッグも、いかにも一流ブランドで、またそれがさりげなく身についている。亜紀にだって、そういう雰囲気ぐらいは感じとれるのである。
 
「そうですけど」
 
 と、亜紀が答えると、
 
「そう! こんなに大きなお子さんがおありなのね」
 
 と、しみじみとした口調。
 
「どなたですか?」
 
 と、少し用心して訊く。
 
「お母様はお出かけね」
 
「ええ……」
 
「少しお話ししてもいいかしら」
 
「あの……」
 
「私、円城寺小百合といいます。お母様と、ちょっとふしぎなご縁があって」
 
 何だかわけが分らないことに変りはなかったが、玄関前で立ち話というわけにもいかず、
 
「どうぞ」
 
 と、亜紀は玄関のドアを開けた。
 
 ——制服を着替える間もなく、亜紀はそのお客にお茶を出す。
 
「ありがとう」
 
 と、円城寺小百合はおっとりと微《ほほ》笑《え》んで、「偉いわね。おいくつ?」
 
「十七です」
 
「高校——二年生? いいわねえ、若いって! 私にもあなたぐらいのころがあったんだわ」
 
 と、そっとお茶を飲んで、「突然伺ってごめんなさい。どんなおうちか見てみたくて」
 
「はあ……」
 
「あなたを見て安心したわ。とてもいいお母様なのね」
 
 誉《ほ》めてもらうのはいいが、さっぱり状況が呑《の》み込めず、
 
「あの、母とはどういう……」
 
「何と言ったらいいのかしら」
 
 と、少し首をかしげて、「私の夫が——円城寺裕《ひろし》といって、私より一回りも年上なんだけど、今、あなたのお母様とお付合いしているはずなのよ」
 
「お付合い……」
 
 亜紀は、その女性の言うことが、すぐには呑み込めなかった。
 
「そう。——もちろん、あなたの所もお父様がいらっしゃるんでしょうけど、こういうことは常識が通用しない問題ですものね」
 
「あの……待って下さい!」
 
 さすがに亜紀も焦った。お母さんが他の男性と?
 
 ——まさか!
 
「もちろん、あなたにはショックでしょうね。でも、大人になればきっと分るようになるわ」
 
 円城寺小百合と名のったその女性、夫が浮気しているという話なのに、少しも怒りらしきものを見せない。
 
 亜紀は、本来なら怒るか笑うかして、
 
「間違いです! そんなこと、あるわけないですよ」
 
 と言ってやれば良かったのだ。
 
 でも、そうできなかったのは、いつか母が妙なことを口走って——男なんて、みんな女を引っ掛けることばかり考えてる、とか何とか——動揺している様子だった日のことを思い出していたからだ。
 
 でも、まさか……。本当にお母さんが?
 
「今日、お母様は?」
 
「あの——出かけてます。フランス語の教室に」
 
「主人は急にアメリカからお客様がみえて、そのお相手と言って出かけたわ」
 
 亜紀は、何とか落ちつきを取り戻そうと努力した。
 
「あの……何かの間違いじゃないんでしょうか」
 
「だといいと思ってるのよ、私だって。主人に裏切られて嬉《うれ》しいなんて人、いないでしょうからね」
 
「ええ、それは……」
 
「でも、一《いつ》旦《たん》心が離れてしまったら、もう取り戻すのは無理。しがみつけばつくほど、相手は逃げて行くわ」
 
 十七歳の、まだファーストキスから半月しかたっていない女の子には、やや理解の困難な話である。
 
「でも、心配しないで」
 
 と、小百合は微笑んで、「私、あなたのお母様を相手につかみ合いをやったり、泣き喚《わめ》いたりはしないから」
 
 そう聞いて喜べるものじゃない。
 
「私ね、どういうご家庭かと思って、それを見に来たの。あなたもとてもしっかりしてるし、これなら大丈夫だわ。安心よ」
 
「——何が大丈夫なんですか?」
 
「ご両親の離婚とか再婚とかがあっても、それであなたが家出したりぐれたりってことはなさそうですもの」
 
 ずいぶん発想の古典的な人だ、と、こんなときなのに亜紀は感心したりしていたが——。
 
「ちょっと待って下さい! はっきりした証拠もないのに。今日だって、本当に母はフランス語へ、ご主人は仕事に出られてるのかもしれないでしょう?」
 
 おじいさんは山へ柴《しば》かりに、おばあさんは川へ洗濯に——。何考えてるんだ、全く!
 
 ともかく、亜紀はすっかり混乱してしまっていた。
 
「信じたくない気持はよく分るわ」
 
 と、小百合は肯《うなず》いて、「信じるも信じないもあなたの自由。そう考えてね」
 
「でも——聞いちゃったのに、知らないことになんかできません」
 
 と、亜紀は言い返して、「あの……ともかくもう少し事実を確かめた方がいいんじゃないですか? もし間違いだったら……」
 
「どうでもいいのよ。私、どうせもうじき死ぬんだもの」
 
「だからって、物事は——。今、何て言ったんですか?」
 
 亜紀は耳を疑って、「『死ぬ』って……。そう言ったんですか?」
 
「ええ」
 
 と、小百合はあっさりと言った。
 
「どこか、具合でも悪いんですか」
 
「私、自分がいない方がみんな幸せになると分ってるのに、図々しく生きてることなんてできないの。自殺しようと思って、ほら、こうやって遺書を持って歩いてるのよ」
 
 と、バッグから手紙らしきものを取り出す。
 
 亜紀は段々くたびれて来た。——何考えてるの、この人?
 
「私にも……あなたみたいな娘があったらね……。死のうとは思わないでしょうに」
 
 小百合の顔に寂しげなかげが射す。
 
 それを見て、亜紀は胸をつかれたような気がした。
 
 ——この人は、決して「おかしな人」じゃない。ただ、生きる目的を失っているのだ。
 
 大人を相手に、十七歳の女の子がこんなことを考えるのは変だろうか?
 
 でも、たとえ本物の(というのも変だが)恋に苦しんだことがなくても、愛する人を失う辛《つら》さは理解できる。
 
「円城寺さん——でしたっけ」
 
 と、亜紀は言った。「私も、母が本当はどうなのか、知りたいと思います。知らずに、疑って苦しんでるなんて、つまらないと思うんです。だから——調べてみません?」
 
「調べる?」
 
「ええ、母とあなたのご主人が会ってるのかどうか。私、やってみたいんです」
 
 小百合はポカンとしていたが、
 
「でも、どうやって?」
 
「もちろん、後を尾《つ》けたり、見張ったりするんです。TVで探偵がやってるみたいに。どうですか?」
 
「そんなこと……できるかしら?」
 
「できますよ! ——私は学校があって、普通の日は休めないけど、土曜日の午後とか日曜日とかなら……」
 
「私は、たぶん……毎日暇なの」
 
 と言って、小百合は思いがけず笑った。「あなたって、面白い子!」
 
 亜紀も、何だか楽しくなった。
 
 まるでTVドラマの中に飛び込んだみたいだった。
 
 亜紀は、小百合から夫、円城寺裕のことを色々教えてもらい、メモを取った。
 
「——四十三歳。社長。車はBMW。容姿も抜群か。もてて当り前だなあ」
 
 と言ってから、「あ、ごめんなさい」
 
「いいえ。——もともと、女性関係の絶えない人だったの」
 
 と、小百合は大して気にとめない様子で、「でもね、私みたいな女は珍しかったんでしょうね。もちろん、あの人に恋してたけど、積極的に近付こうとしたわけでもないし、大体、こんなでしょ。目立たないの、どこにいても」
 
「そんなことないですよ」
 
 と、亜紀は言った。「とっても可《か》愛《わい》いと思うな、奥さんって」
 
「まあ、ありがとう」
 
 と、小百合は嬉しそうに言った。
 
「じゃ、今度、ご主人の写真を見せて下さい。顔、知ってた方がいいでしょ。うちの母の写真、見ます?」
 
 どうしてこうも張り切っているのか、自分でもよく分らなかった。
 
 ともかく、この奥さんが自殺しようというのを、やめさせたいと——そう思っていたことは確かである。
 
 亜紀と母が二人で並んだ写真を一枚持って来て見せると、
 
「まあ、チャーミングな方!」
 
「今ごろクシャミしてますね」
 
 小百合が笑って、
 
「あなた、お母様に似てるわね」
 
「そうですか?」
 
「私からあなたへ連絡するときはどうしましょうか?」
 
 亜紀は少し考え込んで、
 
「ポケベルにかけてもらっても……。これ番号です」
 
「そういうの、よく分らないの」
 
「じゃあ……。電話して下さってもいいですよ」
 
「でも、おかしいでしょ」
 
「顔、見えないんですもの! 友だちみたいなふりしてれば」
 
「友だち?」
 
「『亜紀、います?』って感じで。『小百合ですけど』ってやれば、どこかの〈小百合ちゃん〉だと思いますよ」
 
「そんなこと……。できるかしら?」
 
「やってみます? 少し甲高い声で、ハイ!」
 
「あ……あの……恐れ入りますが……」
 
「だめですよ、そんなんじゃ。ポンポンと弾《はじ》ける感じで」
 
 ——結局、円城寺小百合と亜紀は、一時間近くも電話のやりとりの訓練をくり返したのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%