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殺人はそよ風のように01

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:プロローグ 夜の道を、一人の男が歩いていた。 男は紳《しん》士《し》でもなく、殺し屋でもなかった。 ともかく、「ない物だ
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 プロローグ
 
 夜の道を、一人の男が歩いていた。
 男は紳《しん》士《し》でもなく、殺し屋でもなかった。
 ともかく、「ない物だらけ」の男だった。
 金がなかった。持ち物といって、鞄《かばん》一つ持っているわけではなかった。服は——着てはいたが、「服」と呼んだら、そのボロ布《きれ》が赤面するかもしれないと思えるほどだった。
 加えて、靴《くつ》もはいていない。右と左で別々の、さんざん底のすり減ったサンダルをはいていた。
 男には、職もなく、家もなく、歩いてはいても、どこへ行くというあ《ヽ》て《ヽ》もなかった。
 要するに、薄《うす》汚《よご》れた一人の浮《ふ》浪《ろう》者《しや》だったのである。
 ところで、この浮浪者にとって、今、何時かというのはあまり問題にはならないが、ともかく、まだ夜の、そう遅《おそ》い時間ではなかった。
 行くあてもないのに、この浮浪者が歩いているのは、食べ物にありつける所まで行かなくてはならないからだった。今歩いている通りは、いやに人通りも少なくて、少々薄《うす》暗《ぐら》かった。
 何やら大きな建物が目に入った。駐《ちゆう》車《しや》場《じよう》があって、その入口の所に、何とかいう〈ホール通用口〉という札《ふだ》が見えた。
 要するにここは裏側なのだろう。ホール、といっても、食堂やら何やらがあって、食べ物にありつける場所ではなさそうだ。
 それに、もう閉まっているのか、人の姿もなくて、いやに静かだった。
 浮《ふ》浪《ろう》者《しや》が捜しているのは、こんな場所ではない。小さな店が——ラーメン屋だの、うどん屋だのが、軒《のき》を並べている通りだ。
 そのまま素通りしようとして、浮浪者は、すぐそばに人がいるのに気が付いてびっくりした。しかし、アルコールで反《はん》応《のう》の鈍《にぶ》くなった体のほうは、一向にびっくりしなかった。
 まだ若い男だった。いや、「少年」と呼んだほうがいいかもしれない。
 十七か十八か。——ともかく浮浪者は、自分も、昔《むかし》、こんな年《ねん》齢《れい》だったことがあったのだ、と、ちょっと感傷的に考えた。
 しかし、今の若者は、背も高いし、体も大きい。目の前の少年は、ヒョロリとのっぽで、ほっそりしていた。
 ジャンパーを着《き》込《こ》んで、そのポケットに両手を突《つ》っ込んでいる。オートバイ——というには小さい、よく最近、奥さん連中が乗り回している、オモチャみたいなバイクが置いてあって、少年はそれにもたれて立っているのだった。
 浮浪者を見ると、ちょっとギクリとした様子だったが、何でもないと分かると、目をそらした。
 彼《かの》女《じよ》と待ち合わせかね、おい。
 浮《ふ》浪《ろう》者《しや》は、そう冷やかしてやろうかと思ったが、腹が減って、声が出ない。もっとも、腹が減っているのは、いつものことだ。
 その少年が、バイクの上の紙《かみ》袋《ぶくろ》から、紙にくるんだものを出し、広げると——中味はハンバーガーだった——食べようとして、ためらった。それから、浮浪者の目が、じっとその「包み」を見ているのに気付くと、
 「食べる?」
 と、差し出した。
 「——いいのかい?」
 かすれた声が出て来た。
 「食欲ないんだ。いいよ」
 ハンバーガーは、少年の手から消えると、アッという間に浮浪者の胃におさまっていた。
 「——ありがとうよ」
 浮浪者は少し力の入った声で言った。「誰《だれ》か待ってんのかね?」
 「うん、ちょっとね」
 少年の目は、そのホールの建物の方へ向いていた。
 しかし——恋人でも待っているにしては、その表情はあまり浮《う》き浮きしているとはいえなかった。
 俺《おれ》だって昔《むかし》は恋なんてものをしたことがあったんだ、と浮《ふ》浪《ろう》者《しや》は思った。いつのことだったか、どんな女だったかも、忘れちまったが……。そうさ、恋ってのは、ちっとも楽しくなんかねえんだ。苦しくて、辛《つら》いことばっかりさ。——それだけは、しっかり憶《おぼ》えているぜ。
 「ここにいると危いよ」
 と、少年が言った。
 「危ねえって……何が?」
 「だから、もうすぐあそこから——」
 少年がそう言いかけたとき、建物の中から、バラバラと人影が走り出て来た。
 「来た!」
 少年は、ヘルメットをつかんで頭にかぶると、バイクに飛び乗り、エンジンをかけた。
 何事だ?——浮浪者は呆《あつ》気《け》に取られていた。
 走り出て来たのは、何だかいやに真っ白な、フワッと裾《すそ》の広がった服を着た女の子と、男が三人。駐《ちゆう》車《しや》場《じよう》に停《と》めてあった車に飛び込《こ》むと、すぐに車が動き出した。
 どうやら運転手が中で待機していたらしい。車はグルリと回って、駐車場を出て行った。車が、少年と浮浪者の前を走り抜けて行くと、少し間を置いて、少年のバイクが、その後を追った。
 「ありがとよ!」
 浮浪者は声をかけたが、少年には届かなかったろう。
 しかし、何をやってるのかな?
 浮《ふ》浪《ろう》者《しや》は、そのとき、何だか妙《みよう》な物音が近づいて来るのに気付いて、振《ふ》り返った。
 ドドド……。何だか地鳴りのような音と、そして、キャーキャーと入りまじる叫《さけ》び声。
 何だ、一体?
 戸《と》惑《まど》って突《つ》っ立っていた浮浪者は、目を見開いた。——道の角から、少年少女が飛び出して来た。何十人——いや、何百人だ。
 アッという間に、道一杯に広がって走って来る。いや、押《お》し寄せて来る。戦争か、これは?
 「あれだ! あの車だ!」
 と いう叫び声。
 キャーッ、ワーッ、と、人間とは思えない凄《すさ》まじい声が、塊《かたまり》となってぶつかって来る。
 危いや、こりゃ。浮浪者は、わきへどいていよう、と思った。
 しかし、思ったときには、少年少女の急《ヽ》流《ヽ》が、浮浪者を飲み込《こ》んでしまった。
 突き飛ばされてひっくり返った浮浪者は、あわてた。やっと、「危い」という意識に、体がついて、起き上がりかけた。
 そこへ誰《だれ》かがつまずいた。——ともかく、目の前、それも足《あし》下《もと》なんか、まるで目に入らないのだ。浮浪者はけとばされ、踏《ふ》みつけられて、呻《うめ》いた。
 一人——また運の悪いことに、かなり太った女の子が、つまずいて、浮浪者の上に、でん、と尻《しり》もちをついた。浮浪者は、苦しくて声も出ない。
 その上にドタドタと、つづいて何人かが折り重なった。
 薄《うす》れていく意識の中で、浮浪者は、何重にもハムや野菜をはさんだ、サンドイッチのことを考えていた……。
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