日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

赤いこうもり傘01

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:プロローグ ドーヴァー海峡を深い霧が流れていた。 霧笛が息苦しいような叫びを上げて、ドーヴァー連絡船は霧の中を進んでいる
(单词翻译:双击或拖选)
 プロローグ
 
 ドーヴァー海峡を深い霧が流れていた。
 霧笛が息苦しいような叫びを上げて、ドーヴァー連絡船は霧の中を進んでいる。ロンドンからパリヘ向かう列車を丸ごと飲み込んだ巨体は、なおも、その他に自動車、一般乗客も乗せて、いかにも重たげに波を押し分けて行く。
 霧の冷たい午後で、甲板にもほとんど人影がなかった。ただ一人、グレーのコートに身を包んだ中年のイギリス紳士が手すりにもたれて、白い霧の壁を眺めている。そのうち、紳士はふと、背後の足音に気付いて振り返った。
 甲板にも霧が立ちこめているので、足音の主の姿はかすかな輪郭が見えるだけだ。イギリス紳士はしばらく相手の様子をうかがっていたが、霧の裂け目に黒いコート姿がのぞくと、声をかけた。正確な英 国《キングズ・》 英 語《イングリツシユ》である。
「ドーヴァーはいつも霧ですな」
 黒いコートの男が答えた。
「ロンドンは晴れでしょう」
 ドイツなまりの、固い英語であった。
 紳士の方は、ほっと肩の力をゆるめて、
「新しい顔なので、ちょっと心配したよ」
 と微《ほほ》笑《え》んだ。黒いコートの男は、ゆっくり歩を進めて、イギリス紳士と並んで、手すりに両手をのせた。
 際立った対照の二人である。イギリス人の方は長身で、大柄。ビール好きらしい赤ら顔に、人の好さそうな笑みを浮かべた四十代半ばの中年男だった。一方の黒いコートに身を包んだ男は、年の頃《ころ》こそ同じに見えたが、透き通るような金髪に、狐《きつね》を連想させる細い碧《あお》い眼と、尖《とが》った鼻。薄い唇は無表情に結ばれたままだ。中肉中背の体つきは、見るからに敏《びん》捷《しよう》そうで、強いバネを内に秘めているようだった。
 イギリス人は言葉を続けて、
「『伯爵』に伝言してほしい。——彼の相手は日本へ発《た》った、と」
「日本へ?」
「女王陛下の日本ご訪問に関連した任務のようだが、詳しい事は分からない」
 黒いコートの男はゆっくり肯《うなず》くと、
「確かに伝えよう」
「——君は伯爵を知っているのか?」
 イギリス人がタバコに火をつけながら訊《き》いた。黒いコートの男は、相手の勧めるタバコを手を振って断ると、
「いくらかは知っている」
 と答えた。
「そうか。私は噂《うわさ》しか聞いていない」
 イギリス人は首を振って、「もっとも、直接顔を合わせた時は死ぬ時だそうだから、会いたくもないが。……優秀な殺人者だそうだね」
「プロだというだけさ」
「殺人を楽しむ男だと聞いたよ」
「そんな事はない」
「赤ん坊を殺した事もあるというじゃないか。私はいかに祖国のためと言われても、そこまではやりたくない。——スパイとしては失格かもしれないが」
「伯爵も普通の人間だ。ただ、仕事をしている時はプロに徹する。それだけの事だ」
「——ずいぶん伯爵のことに詳しいようだね」
「そうさ」
 黒いコートの男はイギリス人の顔を真っ直ぐ見据《す》えて、「私が伯爵だからね」
 イギリス人は一瞬目を見開いて、相手を見つめたが、次の瞬間にはその鈍重な印象からは思いもよらぬ素早さで、黒いコートの男から数メートルも離れた所へ飛びすさった。同時に、右手に鋭いナイフが光る。
「君を殺すように言われて来た」
『伯爵』と名乗った黒いコートの男は静かに言った。「——すまないが」
 その手にも、いつしかナイフの刃が銀色の光を放っている。二人は油断なく身構えると、三メートルほどの間隔をじりじりとせばめて行った。そして、イギリス人が躍りかかるように飛び出して来ると、伯爵の方は巧みにその下をかいくぐって、相手の背後へ出る。だがイギリス人もすぐに向き直って、鋭く突き出される刃をかわした。
 濃い霧が流れ込んで来て、甲板を白く覆い始めると、争う二人の姿もしだいにその中へ溶け込んでしまう。
 物静かな戦いである。助けを求める声も、ののしり合いもなく、ただ聞こえるのは二人の荒い息づかいと、甲板をこする靴音ばかり。突然、霧のヴェールを通して、激しくもつれ合う格闘の音が響いた。そして絞り出すような、かすかなうめき声が……。三十秒足らずで決闘は終わった。霧はますます濃くなるばかりである。
 静寂が戻ってから、ややあって、何かが水に落ちる音がした。それから、落ち着き払った足音が霧の奥へと遠ざかって行き、やがてそれも絶えた。
 当分晴れそうもない、濃霧のドーヴァー海峡を、連絡船はのろのろと進んで行く。——霧笛が哀《かな》しげに鳴った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%