ファッジは顔をしかめた。
「『あの人』は前回も、人目に立たせたいときには巨人を使った。『誤ご報ほう局きょく』が二十四時間体たい制せいで動いていますよ。現実の出来事を見たマグル全員に記き憶おく修しゅう正せいをかけるのに、忘ぼう却きゃく術じゅつ士したちが何チームも動きましたし、『魔ま法ほう生せい物ぶつ規き制せい管かん理り部ぶ』の大半の者がサマセット州を駆かけずり回ったんですが、巨人は見つかっとらんのでして――大失敗ですな」
「そうでしょうとも!」首相がいきり立った。
「たしかに魔法省の士し気きはそうとう落ちていますよ」ファッジが続けた。
「その上、アメリア・ボーンズを失うし」
「誰だれを?」
「アメリア・ボーンズ。魔ま法ほう法ほう執しっ行こう部ぶの部長ですよ。我々としては、『名前を言ってはいけないあの人』自身の手にかかったと考えていますがね。なにしろたいへん才能ある魔女でしたし、それに――状じょう況きょう証しょう拠こから見て、激はげしく戦ったらしい」
ファッジは咳払せきばらいし、自じ制せい心しんを働かせたらしく、山やま高たか帽ぼうを回すのをやめた。
「しかし、その事件は新聞に載のっていましたが」
首相は自分が怒っていることを一いっ瞬しゅん忘れた。
「我々の新聞にです。アメリア・ボーンズ……一人暮らしの中年の女性と書いてあるだけでした。たしか――無残むざんな殺され方、でしたな? マスコミがかなり書き立てましたよ。なにせ、警察が頭をひねりましてね」
ファッジはため息をついた。
「ああ、そうでしょうとも。中から鍵かぎがかかった部屋で殺された。そうでしたな? ところが我々のほうは、下げ手しゅ人にんが誰だれかをはっきり知っている。だからと言って、我々がすぐにでも下手人を逮捕たいほできるというわけではないのですがね。それに、次はエメリーン・バンスだ。その件はお聞きになっていないのでは――」