「ああ、やあ、ルーナ」
「病びょう棟とうにあんたを探しにいったんだけど」ルーナがカバンをゴソゴソやりながら言った。
「もう退院したって言われたんだ……」
ルーナは、エシャロットみたいな物一本と、斑ふ入りの大きな毒どく茸きのこ一本、それに相当量の猫のトイレ砂のようなものを、ロンの両手に押しつけて、やっと、かなり汚れた羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみを引っぱり出し、ハリーの手に渡した。
「……これをあんたに渡すように言われてたんだ」
小さな羊皮紙の巻紙だった。ハリーはすぐに、それがダンブルドアからの授じゅ業ぎょうの知らせだとわかった。
「今夜だ」ハリーは羊皮紙を広げるや否いなや、ロンとハーマイオニーに告げた。
「この間の試合の解説、よかったぜ!」
ルーナがエシャロットと毒茸と猫のトイレ砂を回収しているときに、ロンが言った。ルーナはあいまいに微笑ほほえんだ。
「からかってるんだ。違う?」ルーナが言った。
「みんな、あたしがひどかったって言うもン」
「違うよ、僕、ほんとにそう思う!」ロンが真顔まがおで言った。
「あんなに解説を楽しんだことないぜ! ところで、これ、何だ?」
ロンは、エシャロットのような物を目の高さに持ち上げて聞いた。
「ああ、それ、ガーディルート」
猫のトイレ砂と毒茸をカバンに押し込みながら、ルーナが答えた。
「ほしかったら、あげるよ。あたし、もっと持ってるもン。ガルピング・プリンピーを撃退げきたいするのに、すごく効果があるんだ」
そしてルーナは行ってしまった。あとに残ったロンは、ガーディルートをつかんだまま、おもしろそうにケタケタ笑っていた。
「あのさ、だんだん好きになってきたよ、ルーナが」
大おお広ひろ間まに向かってまた歩き出しながら、ロンが言った。
「あいつが正気じゃないってことはわかってるけど、そいつはいい意味で――」
ロンが突然口をつぐんだ。険悪けんあくな雰ふん囲い気きのラベンダー・ブラウンが、大だい理り石せきの階段下に立っていた。
「やあ」ロンは、落ち着かない様子で声をかけた。
「行こう」ハリーはそっとハーマイオニーに声をかけ、急いでその場を離れたが、ラベンダーの声を聞かないわけにはいかなかった。
「今日が退院だって、どうして教えてくれなかったの? それに、どうしてあの女ひとが一いっ緒しょなの?」