庭小人がミミズを一匹、なんとか捕まえたところだった。凍こおった土からミミズを抜き出そうと、こんどは力一杯引っぱっていた。ハリーがあんまり長い時間黙だまっているので、スクリムジョールはハリーから庭小人に視線しせんを移しながら言った。
「ちんちくりんな生き物だね? ところで、ハリー、どうかね?」
「何がお望みなのか、僕にはよくわかりません」ハリーが考えながら言った。
「『魔法省と協力』……どういう意味ですか?」
「ああ、いや、大したことではない。約束する」スクリムジョールが言った。
「たとえば、ときどき魔法省に出入りする姿を見せてくれれば、それがちゃんとした印いん象しょうを与えてくれる。それにもちろん、魔法省にいる間は、私の後任として『闇やみ祓ばらい局きょく』の局長になったガウェイン・ロバーズと十分話をする機会があるだろう。ドローレス・アンブリッジが、君が闇祓いになりたいという志こころざしを抱いていると話してくれた。そう、それは簡単に何とかできるだろう……」
ハリーは、腸はらわたの奥から沸々ふつふつと怒りが込み上げてくるのを感じた。すると、ドローレス・アンブリッジは、まだ魔法省にいるってことなのか?
「それじゃ、要するに――」
ハリーは、いくつかはっきりさせたい点があるだけだという言い方をした。
「僕が魔法省のために仕事をしている、という印象を与えたいわけですね?」
「ハリー、君がより深く関与かんよしていると思うことで、みんなの気持が高揚こうようする」
スクリムジョールは、ハリーの飲み込みのよさにほっとしたような口調だった。
「『選ばれし者』、というわけだ……人々に希望を与え、何か興こう奮ふんするようなことが起こっていると感じさせる、それだけなんだよ」
「でも、もし僕が魔法省にしょっちゅう出入りしていたら――」
ハリーは親しげな声を保とうと努力しながら言った。
「魔法省のやろうとしていることを、僕が認めているかのように見えませんか?」
「まあ」スクリムジョールがちょっと顔をしかめた。
「まあ、そうだ。それも一つには我々の望むことで――」
「うまくいくとは思えませんね」
ハリーは愛想あいそよく言った。
「というのも、魔法省がやっていることで、僕の気に入らないことがいくつかあります。たとえばスタン・シャンパイクを監獄かんごくに入れるとか」
スクリムジョールは一いっ瞬しゅん、何も言わなかったが、表情がさっと硬かたくなった。
「君に理解してもらおうとは思わない」
スクリムジョールの声は、ハリーほど上手く怒りを隠かくしきれていなかった。
「いまは危険なときだ。何らかの措そ置ちを取る必要がある。君はまだ十六歳で――」
「ダンブルドアは十六歳よりずっと歳としを取っていますが、スタンをアズカバンに送るべきではないと考えています」ハリーが言った。
「あなたはスタンを犠ぎ牲せい者しゃに仕立て上げ、僕をマスコットに祭り上げようとしている」