沈ちん黙もくに痛みが走った。そして、パーシーが硬かたい声で挨あい拶さつした。
「お母さん、メリー・クリスマス」
「ああ、パーシー!」ウィーズリーおばさんはパーシーの腕の中に飛び込んだ。
ルーファス・スクリムジョールは、ステッキにすがって戸口に佇たたずみ、微笑ほほえみながらこの心こころ温あたたまる情じょう景けいを眺ながめていた。
「突然お邪魔じゃましまして、申し訳ありません」
ウィーズリーおばさんが目をこすりながらにっこりと振り返ったとき、大臣が言った。
「パーシーと二人で近くまで参りましてね――ええ、仕事ですよ――すると、パーシーが、どうしても立ち寄って、みんなに会いたいと言い出しましてね」
しかし、パーシーは、家族のほかの者に挨あい拶さつしたい様子など微塵みじんも見せなかった。背中に定じょう規ぎを当てたように突っ立ったまま、気き詰づまりな様子で、みんなの頭の上のほうを見つめていた。ウィーズリーおじさん、フレッド、ジョージの三人は、硬かたい表情でパーシーを眺ながめていた。
「どうぞ、大臣、中へお入りになって、お座りください!」
ウィーズリーおばさんは帽子ぼうしを直しながら、そわそわした。
「どうぞ、お召し上がりくださいな。八はち面めん鳥ちょうとか、プディンゴとか……えーと――」
「いや、いや、モリーさん」スクリムジョールが言った。
ここに来る前に、パーシーからおばさんの名前を聞き出していたのだろうと、ハリーは推測すいそくした。
「お邪魔じゃましたくありませんのでね。パーシーが、みなさんにどうしても会いたいと騒がなければ、来ることはなかったのですが……」
「ああ、パース!」ウィーズリーおばさんは涙なみだ声ごえになり、背伸びしてパーシーにキスした。
「……ほんの五分ほどお寄りしただけです。みなさんがパーシーと積もる話をなさっている間に、私は庭を散歩さんぽしていますよ。いや、いや、本当にお邪魔したくありません! さて、どなたかこのきれいな庭を案内してくださいませんかね……ああ、そちらのお若い方は食事を終えられたようで、ご一いっ緒しょに散歩はいかがですか?」
食しょく卓たくの周まわりの雰ふん囲い気きが、見る見る変わった。全員の目が、スクリムジョールからハリーへと移った。スクリムジョールがハリーの名前を知らないふりをしても、誰だれも信じなかったし、ハリーが大臣の散歩のお供ともに選ばれたのも、ジニーやフラー、ジョージの皿も空っぽだったことを考えると不自然だった。
「ええ、いいですよ」沈ちん黙もくのまっただ中で、ハリーが言った。
ハリーは騙だまされてはいなかった。スクリムジョールが、たまたま近くまで来たとか、パーシーが家族に会いたがったとか、いろいろ言っても、二人がやって来た本当の理由はこれに違いない。スクリムジョールは、ハリーと差しで話したかったのだ。