嘘うそをつくべきかどうか、ハリーは慎しん重ちょうに考えた。花壇かだんのあちこちに残っている庭にわ小こ人びとの小さな足跡あしあとや、踏ふみつけられた庭の一角に目をやった。クリスマスツリーのてっぺんでチュチュを着ている庭小人を、フレッドが捕まえた場所だ。しばらくして、ハリーは本当のことを言おうと決めた……またはその一部を。
「ええ、話し合いました」
「そうか、そうか……」
そう言いながら、スクリムジョールが探るように目を細めてハリーを見ているのを、ハリーは目の端はしで捕とらえた。そこでハリーは、凍こおった石楠花しゃくなげの下から頭を突き出した庭小人に興味を持ったふりをした。
「それで、ハリー、ダンブルドアは君に何を話したのかね?」
「すみませんが、それは二人だけの話です」ハリーが言った。
ハリーはできるだけ心地よい声で話そうとしたし、スクリムジョールも軽い、親しげな調子でこう言った。
「ああ、もちろんだ。秘密なら、君に明かしてほしいとは思わない……いや、いや……それに、いずれにしても、君が『選ばれし者』であろうとなかろうと、大した問題ではないだろう?」
ハリーは答える前に、一いっ瞬しゅん考え込まなければならなかった。
「大臣、おっしゃっていることがよくわかりません」
「まあ、もちろん、君にとっては、大した問題だろうがね」
スクリムジョールが笑いながら言った。
「しかし魔法界全体にとっては……すべて認識にんしきの問題だろう? 重要なのは、人々が何を信じるかだ」
ハリーは無言だった。話がどこに向かっているか、ハリーはうっすらと先が見えたような気がした。しかし、スクリムジョールがそこにたどり着くのを助けるつもりはなかった。石楠花しゃくなげの下の庭にわ小こ人びとが、ミミズを探して根元を掘ほりはじめた。ハリーはそこから目を離さなかった。
「人々は、まあ、君が本当に『選ばれし者』だと信じている」
スクリムジョールが言った。
「君がまさに英雄えいゆうだと思っている――それは、もちろん、ハリー、そのとおりだ。選ばれていようがいなかろうが!『名前を言ってはいけないあの人』と、いったい君は何度対決しただろう? まあ、とにかく――」
スクリムジョールは返事を待たずに先に進めた。
「要するに、ハリー、君は多くの人にとって、希望の象しょう徴ちょうなのだ。『名前を言ってはいけないあの人』を破滅はめつさせることができるかもしれない誰だれかが、そう運命づけられているかもしれない誰かがいるということが――まあ、当然だが、人々を元気づける。そして、君がいったんそのことに気づけば、魔法省と協力して、人々の気持を高揚こうようさせることが、君の、そう、ほとんど義ぎ務むだと考えるようになるだろうと、私はそう思わざるをえない」