「クソ、あいつら」
フレッドとジョージが雪深い中庭を横切って出ていくのを見ながら、ロンが険悪けんあくな声で言った。
「あの二人なら十秒もかからないんだぜ。そしたら僕たちも出かけられるのに」
「僕は行けない」ハリーが言った。
「ここにいる間は出歩かないって、ダンブルドアに約束したんだ」
「ああ、そう」ロンが言った。
芽キャベツを二、三個剥いてから、またロンが言った。
「君が聞いたスネイプとマルフォイの言い争いのこと、ダンブルドアに言うつもりか?」
「うん」ハリーが答えた。
「やめさせることができる人なら、誰だれにだって言うし、ダンブルドアはその筆頭ひっとうだからね。君のパパにも、もう一度話をするかもしれない」
「だけど、マルフォイが実際何をやっているのかってことを、聞かなかったのは残念だ」
「聞けたはずがないんだ。そうだろ? そこが肝心かんじんなんだ。マルフォイはスネイプに話すのを拒こばんでいたんだから」
二人はしばらく黙だまり込んだが、やがてロンが言った。
「みんなが何て言うか、もち、君にはわかってるよな? パパもダンブルドアもみんなも? スネイプは、実はマルフォイを助けるつもりがない。ただ、マルフォイの企たくらみを聞き出そうとしただけだって」
「スネイプの言い方を聞いてないからだ」ハリーが断言だんげんした。
「どんな役者だって、たとえスネイプでも、演技えんぎでああはできない」
「ああ……一応いちおう言ってみただけさ」ロンが言った。
ハリーは顔をしかめてロンを見た。
「だけど、君は、僕が正しいと思ってるだろ?」
「ああ、そうだとも!」ロンが慌あわてて言った。
「そう思う、ほんと! だけど、みんなは、スネイプが騎き士し団だんの団員だって、そう信じてるだろ?」
ハリーは答えなかった。ハリーの新しい証しょう拠こに対して、まっ先にそういう反論が出てきそうだと、ハリーもとうに考えていた。こんどはハーマイオニーの声が聞こえてきた。
「ハリー、当然、スネイプは、援助えんじょを申し出るふりをしたんだわ。何を企んでいるのかマルフォイにしゃべらせようという計けい略りゃくよ……」