十じっ分ぷん後ごにスネイプが戻もどってきた。トイレに入ってくるなり、スネイプはドアを閉めた。
「去れ」
スネイプの一声で、マートルはすぐに便器べんきの中にスイーッと戻っていった。あとには痛いほどの静けさが残った。
「そんなつもりはありませんでした」
ハリーがすぐさま言った。冷たい水みず浸びたしの床に、ハリーの声が反はん響きょうした。
「あの呪文がどういうものなのか、知りませんでした」
しかし、スネイプは無視した。
「我輩は、君を見くびっていたようだな、ポッター」スネイプが低い声で言った。
「君があのような闇やみの魔ま術じゅつを知っていようとは、誰だれが考えようか? あの呪文は誰に習ったのだ?」
「僕――どこかで読んだんです」
「どこで?」
「あれは――図書室の本です」
ハリーは破れかぶれにでっち上げた。
「思い出せません。何という本――」
「嘘うそをつくな」
スネイプが言った。ハリーは喉のどがからからになった。スネイプが何をしようとしているかわかってはいたが、ハリーはこれまで一度もそれを防げなかった……。
トイレが目の前で揺ゆらめいてきたようだった。すべての考えを締しめ出そうと努力したが、もがけばもがくほど、プリンスの「上じょう級きゅう魔ま法ほう薬やく」の教科書が頭に浮かび、ぼんやり漂ただよった……。
そして次の瞬しゅん間かん、ハリーは壊こわれてびしょ濡ぬれになったトイレで、再びスネイプを見つめていた。勝ち目はないと思いながらも、見られたくないものをスネイプが見なかったことを願いつつ、ハリーはスネイプの暗い目を見つめた。しかし――。
「学用品のカバンを持ってこい」スネイプが静かに言った。
「それと、教科書を全部だ。全部だぞ。ここに、我�ass="title">