「我々は満足していない」
スクリムジョールが首相の言葉を遮さえぎった。
「首相が『服ふく従じゅうの呪じゅ文もん』にかかりでもしたら、マグルの前途ぜんとが案じられる。執しつ務む室しつの隣となりの事務室にいる新しい秘ひ書しょ官かんだが――」
「キングズリー・シャックルボルトのことなら、手放てばなしませんぞ!」首相が語気を強めた。
「あれはとてもできる男で、ほかの人間の二倍の仕事をこなす――」
「あの男が魔法使いだからだ」スクリムジョールはにこりともせずに言った。
「高度に訓練された闇やみ祓ばらいで、あなたを保ほ護ごする任務にんむに就ついている」
「ちょっと待ってくれ!」首相がきっぱりと言った。
「執務室にそちらが勝手に人を入れることはできますまい。私の部下は私が決め――」
「シャックルボルトに満足していると思ったが?」スクリムジョールが冷静れいせいに言った。
「満足している――いや、していたが――」
「それなら、問題はないでしょう?」スクリムジョールが言った。
「私は……それは、シャックルボルトの仕事が、これまでどおり……あー……優ゆう秀しゅうならば」
首相の言葉は腰砕こしくだけに終わった。しかし、スクリムジョールはほとんど聞いていないようだった。
「さて、政せい務む次じ官かんのハーバート・チョーリーだが――」スクリムジョールが続けて言った。
「公こう衆しゅうの面前でアヒルに扮ふんして道化どうけていた男のことだ」
「それがどうしました?」
「明らかに『服従の呪文』をかけ損そこねた結果です」スクリムジョールが言った。
「頭をやられて混乱こんらんしています。しかし、まだ危険人物たりうる」
「ガーガー鳴いているだけですよ!」首相が力なく言った。
「ちょっと休めばきっと……酒を飲みすぎないようにすればたぶん……」
「こうしている間にも、『聖せいマンゴ魔ま法ほう疾しっ患かん傷しょう害がい病びょう院いん』の癒い師し団だんが、診察しんさつをしています。これまでのところ、患者かんじゃは癒師団の癒者いしゃ三人を絞しめ殺そうとしました」
スクリムジョールが言った。
「この男はしばらくマグル社会から遠ざけたほうがよいと思います」
「私は……でも……チョーリーは大丈夫なのでしょうな?」
首相が心配そうに聞いた。スクリムジョールは肩をすくめ、もう暖炉だんろに向かっていた。
「さあ、これ以上言うことはありません。閣下かっか、これからの動きはお伝えしますよ――私個こ人じんは忙いそがしくて伺うかがえないかもしれませんが、そのときは、少なくともこのファッジを遣つかわします。顧問こもんの資格しかくでとどまることに同意しましたので」