「責めをなすり合っても詮せんなきこと」スネイプがすらりと言った。
「すでにやってしまったことだ」
「おまえは何もしなかった!」ベラトリックスがかんかんになった。
「何もだ。我らが危険に身をさらしているときに、おまえはまたしても不在だった。スネイプ、違うか?」
「我輩は残っていよとの命を受けた」スネイプが言った。
「君は闇の帝王と意見を異にするのかもしれんがね。我輩が死し喰くい人びととともに不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんと戦っても、ダンブルドアはそれに気づかなかっただろうと、そうお考えなのかな? それに――失礼ながら――危険とか言われたようだが……十代の子ども六人を相手にしたのではなかったのかね?」
「加勢かせいが来たんだ。知ってのとおり。まもなく不死鳥の騎士団の半数が来た!」
ベラトリックスが唸うなった。
「ところで、騎士団の話が出たついでに聞くが、本部がどこにあるかは明かせないと、おまえはまだ言い張はっているな?」
「『秘ひ密みつの守人もりびと』は我輩ではないのだからして、我輩がその場所の名前を言うことはできない。その呪じゅ文もんがどういう効き方をするか、ご存知ぞんじでしょうな? 闇の帝王は、騎士団について我輩がお伝えした情報で満足していらっしゃる。ご明察めいさつのことと思うが、その情報が過日かじつエメリーン・バンスを捕とらえて殺害することに結びついたし、さらにシリウス・ブラックを始末するにも当然役立ったはずだ。もっとも、やつを片付けた功績こうせきはすべて君のものだが」
スネイプは頭を下げ、ベラトリックスに杯さかずきを上げた。ベラトリックスは硬かたい表情を変えなかった。
「私の最後の質問を避さけているぞ、スネイプ。ハリー・ポッターだ。この五年間、いつでも殺せたはずだ。おまえはまだ殺やっていない。なぜだ?」