「この件を、闇やみの帝てい王おうと話し合ったのかね?」スネイプが聞いた。
「あの方は……最近私たちは――おまえに聞いているのだ、スネイプ!」
「もし我わが輩はいがハリー・ポッターを殺していたら、闇の帝王は、あやつの血を使って蘇よみがえることができず、無敵の存在となることも――」
「あの方が小僧を使うことを見み越こしていた、とでも言うつもりか!」
ベラトリックスが嘲あざけった。
「そうは言わぬ。あの方のご計画を知る由よしもなかった。すでに白状したとおり、我輩は闇の帝王が死んだと思っていた。ただ我輩は、闇の帝王が、ポッターの生存を残念に思っておられない理由を説明しようとしているだけだ。少なくとも一年前までは、だが……」
「それならなぜ、小僧を生かしておいた?」
「我輩の話がわかっていないようだな? 我輩がアズカバン行きにならずにすんだのは、ダンブルドアの庇ひ護ごがあったればこそだ。そのお気に入りの生徒を殺せば、ダンブルドアが我輩を敵視てきしすることになったかもしれない。違うかな? しかし、単にそれだけでのことではなかった。ポッターが初めてホグワーツにやって来たとき、ポッターに関するさまざまな憶測おくそくが流れていたことを思い出していただこう。彼自身が偉大いだいなる闇の魔法使いではないか、だからこそ闇の帝王に攻撃こうげきされても生き残ったのだという噂うわさだ。事実、闇の帝王のかつての部下の多くが、ポッターこそ、我々全員がもう一度集結し、擁立ようりつすべき旗はた頭がしらではないかと考えた。たしかに我輩は興味があった。だからして、ポッターが城に足を踏ふみ入れた瞬しゅん間かんに殺してしまおうという気にはとうていなれなかった」
「もちろん、あいつには特別な能力などまったくないことが、我輩にはすぐ読めた。やつは何度かピンチに陥おちいったが、単なる幸運と、より優すぐれた才能を持った友人との組み合わせだけで乗りきってきた。徹てっ底てい的てきに平凡なやつだ。もっとも、父親同様、独ひとり善よがりの癇かんに障さわるやつではあるが。我輩は手を尽くしてやつをホグワーツから放ほうり出そうとした。学校にふさわしからぬやつだからだ。しかし、やつを殺したり、我輩の目の前で殺されるのを放置するのはどうかな? ダンブルドアがすぐそばにいるからには、そのような危険を冒おかすのは愚おろかというものだ」