第3章 遺志と意思 Will and Won't
ハリー・ポッターは大いびきをかいていた。この四時間ほとんどずっと、部屋の窓際まどぎわに椅い子すを置いて座り、だんだん暗くなる通りを見つめ続けていたが、とうとう眠り込んでしまったのだ。冷たい窓ガラスに顔の半分を押しつけ、メガネは半ばずり落ち、口はあんぐり開いている。ハリーの吐はく息で窓ガラスの一部が曇り、街灯がいとうのオレンジ色の光を受けて光っている。街灯の人工的な明かりがハリーの顔からすべての色味を消し去り、まっ黒なクシャクシャ髪かみの下で幽霊ゆうれいのような顔に見えた。
部屋の中には雑多ざったな持ち物や、ちまちましたガラクタがばら撒まかれていた。床にはふくろうの羽根やりんごの芯しん、キャンディの包み紙が散らかり、ベッドにはごたごたと丸められたローブの間に呪じゅ文もんの本が数冊、乱雑らんざつに転がっている。そして机の上の明かり溜だまりには、新聞が雑然と広げられていた。一枚の新聞に派手な大見出しが見えた。
ハリー・ポッター 選ばれし者?
最近魔法省で『名前を言ってはいけないあの人』が再び目もく撃げきされた不ふ可か解かいな騒動について、いまだに流りゅう言げん蜚ひ語ごが飛び交っている。
忘ぼう却きゃく術士じゅつしの一人は、昨夜魔法省を出る際に、名前を明かすことを拒こばんだ上で、動揺どうようした様子で次のように語った。
「我々は何も話してはいけないことになっている。何も聞かないでくれ」
しかしながら、魔法省内のさる高こう官かん筋すじは、かの伝説の「予言よげんの間ま」が騒動の中心となった現場であることを認めた。
魔法省のスポークス魔マンはこれまで、そのような場所の存在を認めることさえ拒否きょひしてきたが、魔法界では、家か屋おく侵しん入にゅうと窃せっ盗とう未み遂すいの廉かどで現在ア�