「さて、ハリー」ダンブルドアがハリーを見た。
「面倒めんどうなことが起きてのう。きみが我々のためにそれを解決してくれることを望んでおるのじゃ。我々というのは、不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんのことじゃが。しかしまずきみに話さねばならんことがある。シリウスの遺言ゆいごんが一週間前に見つかってのう、所有物のすべてを君に遺のこしたのじゃ」
ソファーのほうから、バーノンおじさんがこっちに顔を向けたが、ハリーはおじさんを見もしなかったし、「あ、はい」と言うほか、何も言うべき言葉を思いつかなかった。
「ほとんどが単たん純じゅん明快なことじゃ」ダンブルドアが続けた。
「グリンゴッツのきみの口座こうざに、ほどほどの金貨が増えたこと、そしてきみがシリウスの私有財産を相続したことじゃ。少々厄やっ介かいな遺産いさんは――」
「名付け親が死んだと?」
バーノンおじさんがソファーから大声で聞いた。ダンブルドアもハリーもおじさんのほうを見た。蜂蜜酒のグラスが、こんどは相当しつこく、バーノンの頭を横からぶっていた。おじさんはそれを払いのけようとした。
「死んだ? こいつの名付け親が?」
「そうじゃ」ダンブルドアは、なぜダーズリー一家に打ち明けなかったのかと、ハリーに尋たずねたりはしなかった。「問題は」ダンブルドアは邪魔じゃまが入らなかったかのようにハリーに話し続けた。「シリウスがグリモールド・プレイス十二番地をきみに遺のこしたのじゃ」
「屋敷やしきを相そう続ぞくしただと?」
バーノンおじさんが小さい目を細くして、意い地じ汚きたなく言った。しかし、誰だれも答えなかった。
「ずっと本部として使っていいです」ハリーが言った。
「僕はどうでもいいんです。あげます。僕はほんとにいらないんだ」
ハリーは、できればグリモールド・プレイス十二番地に二度と足を踏ふみ入れたくなかった。シリウスは、あそこを離れようとあれほど必死だった。それなのに、あの家に閉じ込められて、かび臭い暗い部屋をたった一人で徘徊はいかいしていた。ハリーは、そんなシリウスの記憶に一生つきまとわれるだろうと思った。
「それは気前きまえのよいことじゃ」ダンブルドアが言った。
「しかしながら、我々は一時的にあの建物から退去たいきょした」
「なぜです?」