「さて、これで事は簡単じゃ」ダンブルドアはうれしそうに言った。
「シリウスはやるべきことをやったようじゃのう。きみはグリモールド・プレイス十二番地と、そしてクリーチャーの正当な所有者じゃ」
「僕――僕、こいつをそばに置かないといけないのですか?」
ハリーは仰ぎょう天てんした。足下あしもとでクリーチャーがジタバタし続けている。
「そうしたいなら別じゃが」ダンブルドアが言った。
「わしの意見を言わせてもらえば、ホグワーツに送って厨ちゅう房ぼうで働かせてはどうじゃな。そうすれば、ほかのしもべ妖精が見張ってくれよう」
「ああ」ハリーはほっとした。「そうですね。そうします。えーと――クリーチャー――ホグワーツに行って、そこの厨房でほかのしもべ妖精と一いっ緒しょに働くんだ」
クリーチャーは、こんどは仰向あおむけになって、手足を空中でバタバタさせていたが、心底おぞましげに、ハリーの顔を上下逆さまに見上げて睨にらむなり、もう一度バチンという大きな音を立てて消えた。
「上じょう々じょうじゃ」ダンブルドアが言った。
「もう一つ、ヒッポグリフのバックビークのことがある。シリウスが死んで以来、ハグリッドが世話をしておるが、バックビークはいまやきみのものじゃ。違った措そ置ちを取りたいのであれば……」
「いいえ」ハリーは即座そくざに答えた。
「ハグリッドと一いっ緒しょにいていいです。バックビークはそのほうがうれしいと思います」
「ハグリッドが大喜びするじゃろう」ダンブルドアが微笑ほほえみながら言った。
「バックビークに再会できて、ハグリッドは興こう奮ふんしておった。ところで、バックビークの安全のためにじゃが、しばらくの間、あれをウィザウィングズと呼ぶことに決めたのじゃ。もっとも、魔法省が、かつて死し刑けい宣告せんこくをしたあのヒッポグリフだと気づくとは思えんがのう。さあ、ハリー、トランクは詰め終えているのかね?」
「えーと……」
「わしが現れるかどうか疑っていたのじゃな?」ダンブルドアは鋭するどく指摘してきした。
「ちょっと行って――あの――仕上げしてきます」
ハリーは急いでそう言うと、望遠鏡とスニーカーを慌あわてて拾い上げた。