必要な物を探し出すのに十分ちょっとかかった。やっとのことで、ベッドの下から「透とう明めいマント」を引っぱり出し、「色変わりインク」の蓋ふたを元どおり閉め、大おお鍋なべを詰め込んだ上から無理やりトランクの蓋を閉とじた。それから片手で重いトランクを持ち上げ、もう片方にヘドウィグの籠かごを持って、一階に戻もどった。
ダンブルドアが玄げん関かんホールで待っていてくれなかったのはがっかりだった。また居い間まに戻らなければいけない。
誰だれも話をしていなかった。ダンブルドアは小さくフンフン鼻歌はなうたを歌い、すっかりくつろいだ様子だったが、その場の雰ふん囲い気きたるや、冷えきったお粥かゆより冷たく固まっていた。
「先生――用意ができました」と声をかけながら、ハリーはとてもダーズリー一家に目をやる気になれなかった。
「よろしい」ダンブルドアが言った。「では、最後にもう一つ」
そしてダンブルドアはもう一度ダーズリー一家に話かけた。
「当然おわかりのように、ハリーはあと一年で成人となる――」
「違うわ」ペチュニアおばさんが、ダンブルドアの到着以来、初めて口をきいた。
「とおっしゃいますと?」ダンブルドアは礼儀れいぎ正しく聞き返した。
「いいえ、違いますわ。ダドリーより一ヵ月下だし、ダッダーちゃんはあと二年経たたないと十八になりません」
「ああ」ダンブルドアは愛想あいそよく言った。「しかし、魔法界では、十七歳で成人となるのじゃ」
バーノンおじさんが「生意気な」と呟つぶやいたが、ダンブルドアは聞き流した。
「さて、すでにご存知ぞんじのように、魔法界でヴォルデモート卿きょうと呼ばれている者が、この国に戻もどってきておる。魔法界はいま、戦せん闘とう状じょう態たいにある。ヴォルデモート卿がすでに何度も殺そうとしたハリーは、十五年前よりさらに大きな危険にさらされているのじゃ。十五年前とは、わしがそなたたちに、ハリーの両親が殺されたことを説明し、ハリーを実の息子同様に世話するよう望むという手紙をつけて、ハリーをこの家の戸口に置き去りにしたときのことじゃ」
ダンブルドアは言葉を切った。気軽で静かな声だったし、怒っている様子はまったく見えなかったが、ハリーはダンブルドアから何かひやりとするものが発散はっさんするのを感じたし、ダーズリー一家がわずかに身を寄せ合ったのに気づいた。