この数日というもの、ハリーは目覚めているときは一瞬も休まず、ダンブルドアが迎えにきてくれますようにと必死に願い続けていた。にもかかわらず、一いっ緒しょにプリベット通りを歩きはじめると、ハリーはとても気詰まりな思いがした。これまで、ホグワーツの外で校長と会話らしい会話を交したことがなかった。いつも机を挟はさんで話をしていたからだ。その上、最後に面と向かって話し合ったときの記憶が蘇よみがえり、気まずい思いをいやが上にも強めていた。あのときハリーは、さんざん怒ど鳴なったばかりか、ダンブルドアの大切にしていた物をいくつか、力任まかせに打ち砕くだいた。
しかし、ダンブルドアのほうは、まったくゆったりしたものだった。
「ハリー、杖つえを準備しておくのじゃ」ダンブルドアは朗ほがらかに言った。
「でも、先生、僕は、学校の外で魔法を使ってはいけないのではありませんか?」
「襲おそわれた場合は――」ダンブルドアが言った。「わしが許可する。きみの思いついた反対呪じゅ文もんや呪のろい返しを何なりと使うがよいぞ。しかし、今夜は襲われることを心配せずともよかろうぞ」
「どうしてですか、先生?」
「わしと一緒じゃからのう」
ダンブルドアはさらりと言った。
「ハリー、このあたりでよかろう」
プリベット通りの端はしで、ダンブルドアが急に立ち止まった。
「きみはまだ当然、『姿すがた現あらわし』テストに合格しておらんの?」
「はい」ハリーが言った。
「十七歳にならないとだめなのではないのですか?」
「そのとおりじゃ」ダンブルドアが言った。
「それでは、わしの腕にしっかりつかまらねばならぬ。左腕にしてくれるかの――気づいておろうが、わしの杖腕つえうではいま多少脆もろくなっておるのでな」
ハリーは、ダンブルドアが差し出した左腕をしっかりつかんだ。
「それでよい」ダンブルドアが言った。
「さて、参ろう」