「先生、どうしてその古い同僚の方の家に、直接『姿すがた現あらわし』なさらなかったんですか?」
「それはの、玄げん関かんの戸を蹴破けやぶると同じぐらい失礼なことだからじゃ」ダンブルドアが言った。
「入室を拒こばむ機会を与えるのが、我々魔法使いの間では礼儀れいぎというものでな。いずれにせよ、魔法界の建物はだいたいにおいて、好ましからざる『姿現わし』に対して魔法で護まもられておる。たとえば、ホグワーツでは――」
「――建物の中でも校庭でも『姿現わし』ができない」ハリーがすばやく言った。
「ハーマイオニー・グレンジャーが教えてくれました」
「まさにそのとおり。また左折させつじゃ」
二人の背後で、教会の時計が十二時を打った。昔の同僚を、こんな遅い時間に訪問するのは失礼にならないのだろうかと、ハリーはダンブルドアの考えを訝いぶかしく思ったが、せっかく会話がうまく成り立つようになったので、ハリーにはもっと差し迫せまって質問したいことがあった。
「先生、『日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』で、ファッジがクビになったという記事を見ましたが……」
「そうじゃ」
ダンブルドアは、こんどは急な脇道わきみちを登っていた。
「後任者は、きみも読んだことと思うが、闇やみ祓ばらい局きょくの局長だった人物で、ルーファス・スクリムジョールじゃ」
「その人……適任てきにんだと思われますか?」ハリーが聞いた。
「おもしろい質問じゃ」ダンブルドアが言った。
「たしかに能力はある。コーネリウスよりは意思のはっきりした、強い個性を持っておる」
「ええ、でも僕が言いたいのは――」
「きみが言いたかったことはわかっておる。ルーファスは行動派の人間で、人生の大半を闇の魔法使いと戦ってきたのじゃから、ヴォルデモート卿きょうを過か小しょう評ひょう価かしてはおらぬ」
ハリーは続きを待ったが、ダンブルドアは、「日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」に書かれていたスクリムジョールとの意見の相違そういについて、何も言わなかった。ハリーも、その話題わだいを追つい及きゅうする勇気がなかったので、話題を変えた。