「それから……先生……マダム・ボーンズのことを読みました」
「そうじゃ」ダンブルドアが静かに言った。
「手痛い損失そんしつじゃ。偉大な魔女じゃった。この奥じゃ。たぶん――ァツッ」
ダンブルドアはけがをした手で指差していた。
「先生、その手はどう――?」
「いまは説明している時間がない」ダンブルドアが言った。
「スリル満点の話じゃから、それにふさわしく語りたいでのう」
ダンブルドアはハリーに笑いかけた。すげなく拒絶きょぜつされたわけではなく、質問を続けてよいという意味だと、ハリーはそう思った。
「先生――ふくろうが魔法省のパンフレットを届けてきました。死し喰くい人びとに対して我々がどういう安全措そ置ちを取るべきかについての……」
「そうじゃ、わしも一通受け取った」
ダンブルドアは微笑ほほえんだまま言った。
「役に立つと思ったかの?」
「あんまり」
「そうじゃろうと思うた。たとえばじゃが、きみはまだ、わしのジャムの好みを聞いておらんのう。わしが本当にダンブルドア先生で、騙かたり者ものではないことを確かめるために」
「それは、でも……」
ハリーは叱しかられているのかどうか、よくわからないまま答えはじめた。
「きみの後学こうがくのために言うておくが、ハリー、ラズベリーじゃよ……もっとも、わしが死喰い人なら、わしに扮ふんする前に、必ずジャムの好みを調べておくがのう」
「あ……はい」ハリーが言った。
「あの、パンフレットに、『亡者もうじゃ』とか書いてありました。いったい、どういうものですか? パンフレットでははっきりしませんでした」
「屍しかばねじゃ」ダンブルドアが冷静れいせいに言った。
「闇やみの魔ま法ほう使つかいの命令どおりのことをするように魔法がかけられた死人しびとのことじゃ。しかし、ここしばらくは亡者が目もく撃げきされておらぬ。前回ヴォルデモートが強力だったとき以来……あやつは、言うまでもなく、死人で軍団ができるほど多くの人を殺した。ハリー、ここじゃよ。ここ……」