飛び出した目と、堂々たる銀色のセイウチ髭ひげ。ライラック色の絹のパジャマ。その上に羽は織おった栗色くりいろのビロードの上着についているピカピカのボタンと、つるつる頭のてっぺんに、杖つえ灯あかりが反射はんしゃした。頭のてっぺんはダンブルドアの顎あごにも届かないくらいだ。
「なんでバレた?」
まだ下腹をさすりながらよろよろ立ち上がった男が、呻うめくように言った。肘掛椅子のふりをしていたのを見破られたばかりにしては、見事なほど恥はじ入る様子がない。
「親愛なるホラスよ」
ダンブルドアはおもしろがっているように見えた。
「本当に死し喰くい人びとが訪たずねてきていたのなら、家の上に闇やみの印しるしが出ていたはずじゃ」
男はずんぐりした手で、禿はげ上がった広い額をピシャリと叩たたいた。
「闇の印か」男が呟つぶやいた。
「何か足りないと思っていた……まあ、よいわ。いずれにせよ、そんな暇ひまはなかっただろう。君が部屋に入ってきたときには、腹のクッションの膨ふくらみを仕上げたばかりだったし」
男は大きなため息をつき、その息で口髭の端はしがひらひらはためいた。
「片付けの手助けをしましょうかの?」ダンブルドアが礼儀れいぎ正しく聞いた。
「頼む」男が言った。
背の高い痩身そうしんの魔法使いと背の低い丸い魔法使いが、二人背中合わせに立ち、二人とも同じ動きで杖をスイーッと掃はくように振った。
家具が飛んで元の位置に戻もどり、飾かざり物は空中で元の形になったし、羽根はクッションに吸すい込まれ、破れた本はひとりでに元通りになりながら本棚ほんだなに収まった。石油ランプは脇わき机づくえまで飛んで戻り、また火が灯ともった。おびただしい数の銀の写真立ては、破片はへんが部屋中をキラキラと飛んで、そっくり元に戻り、曇りひとつなく机の上に降り立った。裂さけ目も割れ目も穴も、そこら中で閉じられ、壁かべもひとりでにきれいに拭ふき取られた。