「巧たくみなものじゃ」ダンブルドアが言った。
「しかし、静かな生活を求めるよれよれの老いぼれにしては、たいそう疲れる生き方に聞こえるがのう。さて、ホグワーツに戻もどれば――」
「あの厄介やっかいな学校にいれば、わたしの生活はもっと平和になるとでも言い聞かせるつもりなら、アルバス、言うだけむだだ! たとえ隠かくれ住んでいても、ドローレス・アンブリッジが去ってから、おかしな噂うわさがわたしのところにいくつか届いておるぞ! 君がこのごろ教師にそういう仕打ちをしているなら――」
「アンブリッジ先生は、ケンタウルスの群れと面倒めんどうを起こしたのじゃ」
ダンブルドアが言った。
「きみなら、ホラス、間違っても禁じられた森にずかずか踏ふみ入って、怒ったケンタウルスたちを『汚けがらわしい半はん獣じゅう』呼ばわりするようなまねはするまい」
「そんなことをしたのか? あの女は?」スラグホーンが言った。
「愚おろかしい女め。もともとあいつは好かん」
ハリーがクスクス笑った。ダンブルドアもスラグホーンも、ハリーのほうを振り向いた。
「すみません」ハリーが慌あわてて言った。
「ただ――僕もあの人が嫌いでした」
ダンブルドアが突然立ち上がった。
「帰るのか?」間髪かんはつを入れず、スラグホーンが期き待たい顔がおで言った。
「いや、手ちょう水ず場ばを拝はい借しゃくしたいが」ダンブルドアが言った。
「ああ」スラグホーンは明らかに失望した声で言った。
「廊下ろうかの左手二番目」
ダンブルドアは部屋を横切って出ていった。その背後でドアが閉まると、沈ちん黙もくが訪れた。しばらくして、スラグホーンが立ち上がったが、どうしてよいやらわからない様子だった。ちらりとハリーを見るなり、肩をそびやかして暖炉だんろまで歩き、暖炉を背にしてどでかい尻しりを暖めた。