オークションで競せり負けた熱狂的な蒐しゅう集しゅう家かのような言い方だった。思い出に耽ふけっているらしく、スラグホーンはその場でのろのろと体を回し、熱が尻しり全体に均等きんとうに行き渡るようにしながら、反対側の壁かべを見つめた。
「言うまでもなく、君の母親はマグル生まれだった。そうと知ったときには信じられなかったね。絶対に純じゅん血けつだと思った。それほど優ゆう秀しゅうだった」
「僕の友達にもマグル生まれが一人います」ハリーが言った。
「しかも学年で一番の女性です」
「ときどきそういうことが起こるのは不思議だ。そうだろう?」スラグホーンが言った。
「別に」ハリーが冷たく言った。
スラグホーンは驚いて、ハリーを見下ろした。
「わたしが偏見へんけんを持っているなどと、思ってはいかんぞ!」スラグホーンが言った。
「いや、いや、いーや! 君の母親は、いままででいちばん気に入った生徒の一人だったと、たったいま言ったはずだが? それにダーク・クレスウェルもいるな。彼女の下の学年だった――いまでは小鬼ゴブリン連れん絡らく室しつの室長だ――これもマグル生まれで、非常に才能のある学生だった。いまでも、グリンゴッツの出来事に関して、すばらしい内部情報をよこす!」
スラグホーンは弾はずむように体を上下に揺ゆすりながら、満足げな笑みを浮かべてドレッサーの上にずらりと並んだ輝かがやく写真立てを指差した。それぞれの額がくの中で小さな写真の主が動いている。
「全部昔の生徒だ。サイン入り。バーナバス・カッフに気づいただろうが、『日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』の編へん集しゅう長ちょうで、毎日のニュースに関するわたしの解かい釈しゃくに常に関心を持っている。それにアンブロシウス・フルーム。ハニーデュークスの――誕たん生じょう日びのたびに一箱よこす。それもすべて、わたしがシセロン・ハーキスに紹介してやったおかげで、彼が最初の仕事に就つけたからだ! 後ろの列――首を伸ばせば見えるはずだが――あれがグウェノグ・ジョーンズ。言うまでもなく女性だけのチームのホリヘッド・ハーピーズのキャプテンだ……わたしとハーピーズの選手たちとは、姓名せいめいの名のほうで気軽に呼びあう仲だと聞くと、みんな必ず驚く。それにほしければいつでも、ただの切符が手に入る!」
スラグホーンは、この話をしているうちに、大いに愉快ゆかいになった様子だった。