「それじゃ、この人たちはみんなあなたの居場所を知っていて、いろいろな物を送ってくるのですか?」
ハリーは、菓子の箱やクィディッチの切符が届き、助言や意見を熱心に求める訪問者たちが、スラグホーンの居場所を突き止められるのなら、死し喰くい人びとだけがまだ探し当てていないのはおかしいと思った。
壁かべから血糊ちのりが消えるのと同じぐらいあっという間に、スラグホーンの顔から笑いが拭ぬぐい去られた。
「無論むろん違う」
スラグホーンは、ハリーを見下ろしながら言った。
「一年間誰だれとも連絡を取っていない」
ハリーには、スラグホーンが自分自身の言ったことにショックを受けているように思えた。スラグホーンは一いっ瞬しゅん、相当動揺どうようした様子だった。それから肩をすくめた。
「しかし……賢明けんめいな魔法使いは、こういうときにはおとなしくしているものだ。ダンブルドアが何を話そうと勝手だが、いまこのときにホグワーツに職しょくを得るのは、公おおやけに『不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だん』への忠ちゅう誠せいを表明するに等しい。騎士団員はみな、間違いなくあっぱれで勇敢ゆうかんで、立派な者たちだろうが、わたし個人としてはあの死し亡ぼう率りつはいただけない――」
「ホグワーツで教えても、『不死鳥の騎士団』に入る必要はありません」
ハリーは嘲あざけるような口調を隠かくしきることができなかった。シリウスが洞どう窟くつにうずくまって、ネズミを食べて生きていた姿を思い出すと、スラグホーンの甘やかされた生き方に同情する気には、とうていなれなかった。
「大多数の先生は団員ではありませんし、それに誰も殺されていません――でも、クィレルは別です。あんなふうにヴォルデモートと組んで仕事をしていたのですから、当然の報むくいを受けたんです」
スラグホーンも、ヴォルデモートの名前を聞くのが耐たえられない魔法使いの一人だろうという確信があった。ハリーの期待は裏切うらぎられなかった。スラグホーンは身震みぶるいして、ガーガーと抗議こうぎの声を上げたが、ハリーは無視した。
「ダンブルドアが校長でいるかぎり、教職員はほかの大多数の人より安全だと思います。ダンブルドアは、ヴォルデモートが恐れたただ一人の魔法使いのはずです。そうでしょう?」
ハリーはかまわず続けた。