「シリウスは、それまできみが知らなかった多くのものを体現たいげんしておった」
ダンブルドアは優やさしく言った。
「それを失うことは、当然、大きな痛手じゃ……」
「でも、ダーズリーのところにいる間に」
ハリーが口を挟はさんだ。声がだんだん力強くなっていた。
「僕、わかったんです。閉じこもっていてはだめだって――神経しんけいが参っちゃいけないって。シリウスはそんなことを望まなかったはずです。それに、どっちみち人生は短いんだ……マダム・ボーンズも、エメリーン・バンスも……次は僕かもしれない。そうでしょう? でも、もしそうなら――」
ハリーは、こんどはまっすぐに、杖明つえあかりに輝かがやくダンブルドアの青い目を見つめながら、激はげしい口く調ちょうで言った。
「僕は必ず、できるだけ多くの死し喰くい人びとを道連れにします。それに、僕の力が及ぶならヴォルデモートも」
「父君、母君の息子らしい言葉じゃ。そして、真にシリウスの名付け子じゃ!」
ダンブルドアは満足げにハリーの背中を叩たたいた。
「きみに脱帽だつぼうじゃ――蜘く蛛もを浴あびせかけることにならなければ、本当に帽子ぼうしを脱ぬぐところじゃが」
「さて、ハリーよ、密接みっせつに関連する問題なのじゃが……きみはこの二週間、『日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』を取っておったと思うが?」
「はい」ハリーの心臓の鼓動こどうが少し早くなった。
「さすれば、『予言よげんの間ま』でのきみの冒険ぼうけんについては、情報漏もれどころか情報洪水こうずいだったことがわかるじゃろう?」
「はい」ハリーは同じ返事を繰くり返した。
「ですから、いまではみんなが知っています。僕がその――」
「いや、世間は知らぬことじゃ」ダンブルドアが遮さえぎった。
「きみとヴォルデモートに関してなされた予言の全容を知っているのは、世界中でたった二人だけじゃ。そしてその二人とも、この臭い、蜘蛛だらけの箒ほうき小ご屋やに立っておるのじゃ。しかし、多くの者が、ヴォルデモートが死喰い人に予言を盗ませようとしたこと、そしてその予言がきみに関することだという推すい量りょうをしたし、それが正しい推量であることは確かじゃ」