「わたし、もう帰るわ」
トンクスは短くそう言うと、立ち上がってマントを肩に巻きつけた。
「モリー、お茶と同情をありがとう」
「わしへの気遣きづかいでお帰りになったりせんよう」ダンブルドアが優やさしく言った。
「わしは長くはいられないのじゃ。ルーファス・スクリムジョールと、緊きん急きゅうに話し合わねばならんことがあってのう」
「いえ、いえ、わたし、帰らなければいけないの」トンクスはダンブルドアと目を合わせなかった。「おやすみ――」
「ねえ、週末の夕食にいらっしゃらない? リーマスとマッド・アイも来るし――?」
「ううん、モリー、だめ……でもありがとう……みんな、おやすみなさい」
トンクスは急ぎ足でダンブルドアとハリーのそばを通り、庭に出た。戸口から数歩離れたところで、トンクスはくるりと回り、跡形あとかたもなく消えた。ウィーズリーおばさんが心配そうな顔をしているのに、ハリーは気づいた。
「さて、ホグワーツで会おうぞ、ハリー」ダンブルドアが言った。
「くれぐれも気をつけることじゃ。モリー、ご機嫌きげんよろしゅう」
ダンブルドアはウィーズリー夫人に一礼して、トンクスに続いて出ていき、まったく同じ場所で姿を消した。庭に誰だれもいなくなると、ウィーズリーおばさんは戸を閉め、ハリーの肩を押して、テーブルを照らすランタンの明るい光の所まで連れていき、ハリーの姿を確かめた。
「ロンと同おんなじだわ」
ハリーを上から下まで眺ながめながら、おばさんがため息をついた。
「二人ともまるで『引ひき伸のばし呪じゅ文もん』にかかったみたい。この前ロンに学校用のローブを買ってやってから、あの子、間違いなく十センチは伸びてるわね。ハリー、お腹なか空いてない?」
「うん、空いてる」ハリーは、突然空くう腹ふく感かんに襲おそわれた。
「お座りなさいな。何かあり合わせを作るから」
腰掛こしかけたとたん、ぺちゃんこ顔の、オレンジ色の毛がふわふわした猫が膝ひざに飛び乗り、喉のどをゴロゴロ鳴らしながら座り込んだ。