「もちろんあの人は、その気になればいい人になれるわ。だけどアーサーは、あの人のことをあんまり好きじゃなかった。魔法省はスラグホーンのお気に入りだらけよ。あの人はいつもそういう手助けが上手なの。でもアーサーにはあんまり目をかけたことがなかった――出しゅっ世せ株かぶだとは思わなかったらしいの。でも、ほら、スラグホーンにだって、それこそ目違めちがいってものがあるのよ。ロンはもう手紙で知らせたかしら――ごく最近のことなんだけど――アーサーが昇しょう格かくしたの!」
ウィーズリーおばさんが、はじめからこれを言いたくてたまらなかったことは、火を見るより明らかだった。ハリーは熱いスープをしこたま飲み込んだ。喉のどが火ぶくれになるのがわかるような気がした。
「すごい!」ハリーが息を呑のんで言った。
「やさしい子ね」ウィーズリーおばさんがにっこりした。ハリーが涙なみだ目めになっているのを、知らせを聞いて感激かんげきしていると勘違かんちがいしたらしい。
「そうなの。ルーファス・スクリムジョールが、新しい状況に対応するために、新しい局をいくつか設置してね、アーサーは『偽にせの防ぼう衛えい呪じゅ文もんならびに保ほ護ご器き具ぐの発見はっけんならびに没ぼっ収しゅう局きょく』の局長になったのよ。とっても大切な仕事で、いまでは部下が十人いるわ!」
「それって、何を――?」
「ええ、あのね、『例のあの人』がらみのパニック状じょう態たいで、あちこちでおかしな物が売られるようになったの。『例のあの人』や『死し喰くい人びと』から護まもるはずのいろんな物がね。どんな物か想像がつくというものだわ――保ほ護ご薬やくと称しょうして実は腫れ草ブボチューバーの膿うみを少し混ぜた肉汁ソースだったり、防衛呪文のはずなのに、実際は両耳が落ちてしまう呪文を教えたり……まあ、犯人はだいたいがマンダンガス・フレッチャーのような、まっとうな仕事をしたことがないような連中で、みんなの恐きょう怖ふにつけ込んだ仕業しわざなんだけど、ときどきとんでもない厄介やっかいな物が出てくるの。このあいだアーサーが、呪のろいのかかった『かくれん防ぼう止し器き』を一箱没収したけど、死喰い人が仕し掛かけたものだということは、ほとんど間違いないわ。だからね、とっても大切なお仕事なの。それで、アーサーに言ってやりましたとも。点火プラグだとかトースターだとか、マグルのガラクタを処しょ理りできないのが寂さびしいなんて言うのは、ばかげてるってね」
ウィーズリーおばさんは、点火プラグを懐なつかしがるのは当然だと言ったのがハリーであるかのように、厳きびしい目つきで話し終えた。