「ありがとう、モリー。今夜は大変だった。どこかのばか者が『変化へんげメダル』を売りはじめたんだ。首にかけるだけで、自由に外見を変えられるとか言ってね。十万種類の変身、たった十ガリオン!」
「それで、それをかけると実際どうなるの?」
「だいたいは、かなり気持の悪いオレンジ色になるだけだが、何人かは、体中に触しょく手しゅのようなイボが噴ふき出てきた。聖せいマンゴの仕事がまだ足りないと言わんばかりだ!」
「フレッドとジョージならおもしろがりそうな代物しろものだけど」
おばさんがためらいがちに言った。
「あなた、本当に――?」
「もちろんだ!」おじさんが言った。
「あの子たちは、こんなときにそんなことはしない! みんなが必死に保ほ護ごを求めているというときに!」
「それじゃ、遅くなったのは『変化メダル』のせいなの?」
「いや、エレファント・アンド・キャッスルで性た質ちの悪い『逆さか火び呪のろい』があるとタレ込みがあった。しかし幸い、我々が到着したときにはもう、魔ま法ほう警けい察さつ部ぶ隊たいが片付けていた……」
ハリーは欠伸あくびを手で隠かくした。
「もう寝なくちゃね」
ウィーズリーおばさんの目はごまかせなかった。
「フレッドとジョージの部屋を、あなたのために用意してありますよ。自由にお使いなさいね」
「でも、二人はどこに?」
「ああ、あの子たちはダイアゴン横よこ丁ちょう。悪戯いたずら専せん門もん店てんの上にある、小さなアパートで寝起きしているの。とっても忙しいのでね」
ウィーズリーおばさんが答えた。
「最初は正直言って、感心しなかったわ。でも、あの子たちはどうやら、ちょっと商才があるみたい! さあ、さあ、あなたのトランクはもう上げてありますよ」
「おじさん、おやすみなさい」
ハリーは椅い子すを引きながら挨あい拶さつした。クルックシャンクスが軽かろやかに膝ひざから飛び降り、しゃなしゃなと部屋から出ていった。
「おやすみ、ハリー」おじさんが言った。
おばさんと二人で台所を出るとき、ハリーは、おばさんがちらりと洗せん濯たく物もの籠かごの時計に目をやるのに気づいた。針全部がまたしても「命が危ない」を指していた。