「ママはあの女おんなが大嫌い」ジニーが小声で言った。
「嫌ってはいないわ!」
おばさんが不ふ機き嫌げんに囁ささやくように言った。
「二人が婚約こんやくを急ぎすぎたと思うだけ、それだけです!」
「知り合ってもう一年だぜ」ロンは妙みょうにふらふらしながら、閉まったドアを見つめていた。
「それじゃ、長いとは言えません! どうしてそうなったか、もちろん私にはわかりますよ。『例のあの人』が戻もどってきていろいろ不安になっているからだわ。明日にも死んでしまうかもしれないと思って。だから、普通なら時間をかけるようなことも、決断を急ぐの。前にあの人が強力だったときも同じだったわ。あっちでもこっちでも、そこいらじゅうで駆かけ落おちして――」
「ママとパパも含めてね」ジニーがおちゃめに言った。
「そうよ、まあ、お父さまと私は、お互いにぴったりでしたもの。待つ意味がないでしょう?」ウィーズリー夫人が言った。
「ところがビルとフラーは……さあ……どんな共通点があると言うの? ビルは勤勉きんべんで地味なタイプなのに、あの娘こは――」
「派は手でな雌牛めうし」ジニーが頷うなずいた。
「でもビルは地味じゃないわ。『呪のろい破やぶり』でしょう? ちょっと冒ぼう険けん好きで、わくわくするようなものに惹ひかれる……きっとそれだからヌラーに参ったのよ」
「ジニー、そんな呼び方をするのはおやめなさい」
ウィーズリーおばさんは厳きびしく言ったが、ハリーもハーマイオニーも笑った。
「さあ、もう行かなくちゃ……ハリー、温かいうちに卵を食べるのよ」
おばさんは悩なやみ疲れた様子で、部屋を出ていった。ロンはまだ少しくらくらしているようだった。頭を振ってみたら治なおるかもしれないと、ロンは耳の水をはじき出そうとしている犬のような仕種しぐさをした。