「ハーマイオニー!」
ハリーもロンも同時に叫さけんだ。朝食の盆がガチャンと床に落ちた。
煙の中から、ハーマイオニーが咳せき込みながら現れた。望遠鏡を握り、片方の目に鮮あざやかな紫の隈取くまどりがついている。
「これを握りしめたの。そしたらこれ――これ、私にパンチを食らわせたの」
ハーマイオニーが喘あえいだ。
たしかに、望遠鏡の先からバネつきの小さな拳こぶしが飛び出しているのが見えた。
「大丈夫さ」
ロンは笑い出さないようにしようと必死になっていた。
「ママが治なおしてくれるよ。軽いけがならお手のもん――」
「ああ、でもそんなこと、いまはどうでもいいわ!」
ハーマイオニーが急せき込んだ。
「ハリー、ああ、ハリー……」
ハーマイオニーは再びハリーのベッドに腰掛こしかけた。
「私たち、いろいろと心配していたの。魔法省から戻もどったあと……もちろん、あなたには何も言いたくなかったんだけど、でも、ルシウス・マルフォイが、予言はあなたとヴォルデモートに関わることだって言ってたものだから、それで、もしかしたらこんなことじゃないかって、私たちそう思っていたの……ああ、ハリー……」
ハーマイオニーはハリーをじっと見た。そして囁ささやくように言った。
「怖こわい?」
「いまはそれほどでもない」ハリーが言った。
「最初に聞いたときは、たしかに……でもいまは、なんだかずっと知っていたような気がする。最後にはあいつと対決しなければならないことを……」
「ダンブルドア自身が君を迎えにいくって聞いたとき、僕たち、君に予言に関わることを何か話すんじゃないか、何かを見せるんじゃないかって思ったんだ」
ロンが夢中になって話した。
「僕たち、少しは当たってただろ? 君に見込みがないと思ったら、ダンブルドアは個こ人じん教きょう授じゅなんかしないよ。時間のむだ使いなんか――ダンブルドアはきっと、君に勝ち目があると思っているんだ!」
「そうよ」ハーマイオニーが言った。
「ハリー、いったいあなたに何を教えるのかしら? とっても高度な防ぼう衛えい術じゅつかも……強力な反対呪じゅ文もん……呪のろい崩くずし……」