十分後、ハリーが服を着て、空からの盆を手に階下かいかに降りていくと、ハーマイオニーはじりじり心配しながら台所のテーブルのそばに腰掛こしかけ、ウィーズリーおばさんは、半パンダになったハーマイオニーの顔を何とかしようとしていた。
「どうやっても取れないわ」
ウィーズリーおばさんが心配そうに言った。おばさんはハーマイオニーのそばに立ち、片手に杖つえを持ち、もう片方には「癒者いしゃのいろは」を持って、「切り傷、擦すり傷、打だ撲ぼく傷しょう」のページを開けていた。
「いつもはこれでうまくいくのに。まったくどうしたのかしら」
「フレッドとジョージの考えそうな冗じょう談だんよ。絶対に取れなくしたんだ」ジニーが言った。
「でも取れてくれなきゃ!」
ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。
「一生こんな顔で過ごすわけにはいかないわ!」
「そうはなりませんよ。解げ毒どく剤ざいを見つけますから、心配しないで」
ウィーズリーおばさんが慰なぐさめた。
「ビルが、フレッドとジョージがどんなにおもしろいか、あはなしてくれまーした!」
フラーが、落ち着き払って微笑ほほえんだ。
「ええ、笑いすぎて息もできないわ」ハーマイオニーが噛かみついた。
ハーマイオニーは急に立ち上がり、両手を握り合わせて指をひねりながら、台所を往いったり来たりしはじめた。
「ウィーズリーおばさん、ほんとに、ほんとに、午前中にふくろうは来なかった?」
「来ませんよ。来たら気づくはずですもの」
おばさんが辛抱しんぼう強く言った。
「でもまだ九時にもなっていないのですからね、時間は十分……」
「古代こだいルーン文も字じはめちゃめちゃだったわ」
ハーマイオニーが熱に浮かされたように呟つぶやいた。
「少なくとも一つ重大な誤訳ごやくをしたのは間違いないの。それに『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の実技は全然よくなかったし。『変へん身しん術じゅつ』は、あのときは大丈夫だと思ったけど、いま考えると――」
「ハーマイオニー、黙だまれよ。心配なのは君だけじゃないんだぜ!」
ロンが大声を上げた。
「それに、君のほうは、大いによろしいの『O・優』を十科目も取ったりして……」
「言わないで! 言わないで! 言わないで!」
ハーマイオニーはヒステリー気味に両手をバタバタ振った。
「きっと全科目落ちたわ!」