「ハーマイオニー?」
まだ背を向けたままのハーマイオニーに、ジニーが恐る恐る声をかけた。
「どうだったの?」
「私――悪くないわ」ハーマイオニーがか細い声で言った。
「冗じょう談だんやめろよ」
ロンがつかつかとハーマイオニーに近づき、成績表を手からサッともぎ取った。
「それ見ろ――『優・O』が九個、『良りょう・E』が一個、『闇の魔術に対する防衛術』だ」
ロンは半分おもしろそうに、半分呆あきれてハーマイオニーを見下ろした。
「君、まさか、がっかりしてるんじゃないだろうな?」
ハーマイオニーが首を横に振ったが、ハリーは笑い出した。
「さあ、われらはいまやN・E・W・Tい も り学生だ!」ロンがニヤリと笑った。
「ママ、ソーセージ残ってない?」
ハリーは、もう一度自分の成績を見下ろした。これ以上望めないほどのよい成績だ。一つだけ、後悔こうかいに小さく胸が痛む……闇やみ祓ばらいになる野心はこれでおしまいだった。『魔法薬学』で必要な成績を取ることができなかった。できないことははじめからわかっていたが、それでも、あらためて小さな黒い「良・E」の文字を見ると、胃が落ち込むのを感じた。
ハリーはいい闇祓いになるだろうと、最初に言ってくれたのが、変身した死し喰くい人びとだったことを考えるととても奇き妙みょうだったが、なぜかその考えがいままでハリーをとらえてきた。それ以外になりたいものを思いつかなかった。しかも、一ヵ月前に予言を聞いてからは、それがハリーにとって然しかるべき運命のように思えていた。
……一方いっぽうが生きるかぎり、他方たほうは生きられぬ……
ヴォルデモートを探し出して殺す使命しめいを帯びた、高度に訓練を受けた魔法使いの仲間になれたなら、予言を成じょう就じゅし、自分が生き残る最大のチャンスが得られたのではないだろうか?