ローブ掛かけの陰かげから、ナルシッサ・マルフォイがゆっくりと現れた。
「それをおしまいなさい」ナルシッサが、ハリーとロンに冷たく言った。
「私の息子をまた攻こう撃げきしたりすれば、それがあなたたちの最後の仕業しわざになるようにしてあげますよ」
「へーえ?」
ハリーは一歩進み出て、ナルシッサの落ち着き払った高慢こうまんな顔をじっと見た。蒼あおざめてはいても、その顔はやはり姉に似ている。ハリーはもう、ナルシッサと同じぐらいの背丈せたけになっていた。
「仲間の死し喰くい人びとを何人か呼んで、僕たちを始末しまつしてしまおうというわけか?」
マダム・マルキンは悲鳴ひめいを上げて、心臓のあたりを押さえた。
「そんな、非難ひなんなんて――そんな危険なことを――杖をしまって。お願いだから!」
しかし、ハリーは杖を下ろさなかった。ナルシッサ・マルフォイは不快げな笑えみを浮かべていた。
「ダンブルドアのお気に入りだと思って、どうやら間違った安全感覚をお持ちのようね、ハリー・ポッター。でも、ダンブルドアがいつもそばであなたを護まもってくれるわけじゃありませんよ」
ハリーは、からかうように店内を見回した。
「ウワー……どうだい……ダンブルドアはいまここにいないや! それじゃ、ためしにやってみたらどうだい? アズカバンに二人部屋を見つけてもらえるかもしれないよ。敗北者のご主人と一いっ緒しょにね!」
マルフォイが怒って、ハリーにつかみかかろうとしたが、長すぎるローブに足を取られてよろめいた。ロンが大声で笑った。
「母上に向かって、ポッター、よくもそんな口のきき方を!」マルフォイが凄すごんだ。
「ドラコ、いいのよ」ナルシッサがほっそりした白い指をドラコの肩に置いて制せいした。
「私がルシウスと一緒になる前に、ポッターは愛するシリウスと一緒になることでしょう」
ハリーはさらに杖を上げた。
「ハリー、だめ!」
ハーマイオニーが呻うめき声を上げ、ハリーの腕を押さえて下ろさせようとした。
「落ち着いて……やってはだめよ……困ったことになるわ……」