ロンとハリーが先に立って店に入った。お客で満員だ。ハリーは商品棚だなに近づくこともできなかった。目を凝こらして見回すと、天井まで積み上げられた箱が見え、そこには双子ふたごが先学期、中ちゅう退たいする前に完成した「ずる休みスナックボックス」が山積やまづみされていた。「鼻血ヌルヌル・ヌガー」が一番人気の商品らしく、棚にはつぶれた箱一箱しか残っていない。「だまし杖づえ」がぎっしり詰まった容器ようきもある。いちばん安い杖は、振るとゴム製せいの鶏にわとりかパンツに変わるだけだが、いちばん高い杖つえは、油断ゆだんしていると持ち主の頭や首を叩たたく。羽根ペンの箱を見ると、「自動インク」、「綴つづりチェック」、「冴さえた解答かいとう」などの種類があった。
人混ひとごみの間に隙間すきまができたので、押し分けてカウンターに近づいてみると、そこには就しゅう学がく前まえの十歳児たちがわいわい集まって、木製のミニチュア人形が、本物の絞こう首しゅ台だいに向かってゆっくり階段を上っていくのを見ていた。その下に置かれた箱にはこう書いてある。
「何度も使えるハングマン首吊くびつり綴つづり遊び――綴らないと吊るすぞ!」
「『特許とっきょ・白はく昼ちゅう夢む呪じゅ文もん』……」
やっと人混みを掻き分けてやって来たハーマイオニーが、カウンターのそばにある大きなディスプレーを眺ながめて、商品の箱の裏うらに書かれた説明書きを読んでいた。箱には、海かい賊ぞく船せんの甲かん板ぱんに立っているハンサムな若者とうっとりした顔の若い女性の絵が、ど派手な色で描かかれていた。
簡単な呪文で、現実味のある最高級の夢の世界へ三十分。平均的授じゅ業ぎょう時間に楽々フィット。ほとんど気づかれません(副ふく作さ用ようとして、ボーっとした表情と軽い涎よだれあり)。十六歳未満みまんお断ことわり
「あのね」ハーマイオニーが、ハリーを見て言った。
「これ、本当にすばらしい魔法だわ!」
「よくぞ言った、ハーマイオニー」二人の背後で声がした。「その言葉に一箱無む料りょう進しん呈ていだ」
フレッドが、にっこり笑って二人の前に立っていた。赤あか紫むらさき色いろのローブが、燃えるような赤毛と見事に反発し合っている。